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作品 - 20110607_626_5280p

  • [優]  憎悪 - Q  (2011-06)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


憎悪

  Q

病は、母の、庭で、いつものように、
 呼吸しては、父の、額で、水に変わる、
 その水で、洗われた、子供が、
 また、庭で、芽吹く、
 小鳥は空へ落ちる、
 魚は海へ落ちる、
 動物は森へ落ちる、

 初夏は海に落ちて、波に変わる。日盛りの庭には、光が居座って、ずっと場所をあけようとしない。
 「散文詩に混じって」
 「大きな声で」
 「色は互いに」
 「そう、いつのまにか飽和して」
 
 漂流物のいくつかを拾い上げて、光と一緒にビンに詰める。
 「その手は病を遠くへ」
 「いや、病に混じって」
 「ここからは、ずっと何も飛来しない場所」
 「ずいぶんと多くのものが、私達の内側で」
 「忘れ去れては消えて」

 小鳥は空へ落ちる、
 魚は海へ落ちる、
 動物は森へ落ちる、
 
 「そしてここから想像」
 
 マトバは、瞳を開けて、砂で瞳を洗う、家に流れ込んでくる砂が、もう部屋の半分以上を埋め尽くした
 書棚にしまわれている本の間にも砂が、そして文字をさらって行く、もうそれらを取り返すことができない
 ことを、彼は一番良く知っていたから、砂で瞳を洗う、文字をさらった砂で、
 彼の食卓に並べられるのは、砂が運んできた缶詰ばかり、その一つ一つにも、砂が混じっている、
 マトバの、家の扉を叩く、唯一の友人は砂、音がすれば、彼は砂を迎え入れる、
 あまりにも、来客がおおすぎたから、彼の扉はもう閉まることが無い、

 「初夏が散文に混じって」
 「病と光がずっと飛来しない」
 「場所は、忘れ去れて、飽和する」
 「大きな声で、お互いに」
 「想像する」

 父は、病で、母に洗われ、子供達は、
 庭で、水を、

 

文学極道

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