病は、母の、庭で、いつものように、
呼吸しては、父の、額で、水に変わる、
その水で、洗われた、子供が、
また、庭で、芽吹く、
小鳥は空へ落ちる、
魚は海へ落ちる、
動物は森へ落ちる、
初夏は海に落ちて、波に変わる。日盛りの庭には、光が居座って、ずっと場所をあけようとしない。
「散文詩に混じって」
「大きな声で」
「色は互いに」
「そう、いつのまにか飽和して」
漂流物のいくつかを拾い上げて、光と一緒にビンに詰める。
「その手は病を遠くへ」
「いや、病に混じって」
「ここからは、ずっと何も飛来しない場所」
「ずいぶんと多くのものが、私達の内側で」
「忘れ去れては消えて」
小鳥は空へ落ちる、
魚は海へ落ちる、
動物は森へ落ちる、
「そしてここから想像」
マトバは、瞳を開けて、砂で瞳を洗う、家に流れ込んでくる砂が、もう部屋の半分以上を埋め尽くした
書棚にしまわれている本の間にも砂が、そして文字をさらって行く、もうそれらを取り返すことができない
ことを、彼は一番良く知っていたから、砂で瞳を洗う、文字をさらった砂で、
彼の食卓に並べられるのは、砂が運んできた缶詰ばかり、その一つ一つにも、砂が混じっている、
マトバの、家の扉を叩く、唯一の友人は砂、音がすれば、彼は砂を迎え入れる、
あまりにも、来客がおおすぎたから、彼の扉はもう閉まることが無い、
「初夏が散文に混じって」
「病と光がずっと飛来しない」
「場所は、忘れ去れて、飽和する」
「大きな声で、お互いに」
「想像する」
父は、病で、母に洗われ、子供達は、
庭で、水を、
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作品 - 20110607_626_5280p
- [優] 憎悪 - Q (2011-06)
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憎悪
Q