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作品 - 20110228_721_5043p

  • [佳]  aoi - 南 悠一  (2011-02)

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aoi

  南 悠一

彼女の背中越しについた
ため息のぬるさが
午後過ぎのお茶の温度に近似する時刻
俺はまどろみという背中越しに投げ掛けられた毛布に身を包む
見せてみろ、いつからか憂鬱に染まり出した地帯では
この銀色のチンチラが世界の一角を覆う布に変わる
地球の表面に観察される銀の突起の群れに
俺は微熱を感じる、その正体を見せてみろ

乳房の温もりに挟まれた掌を曝す窓際に
冬のひび割れた地面のような皹が伝って
ガラスごと割れてしまいそうだ
間延びした言葉をぶつけ合うやり方は
少年たちのコマの硬さをもっている
どうして僕は同じところばかり回っているんだろう
なんて 考えもしないで遊びほうけている
俺にもそんな時代があったが
過ぎ去ってしまったのだろう
ずっと眺めていなければ気づかないような微妙な変化を
空は繰り返していた
繰り越すことの重荷のために割れそうだった

少女が家にくる 俺は決まって毛布を着込む
毛皮の隙間から差し込んでくる
彼女の瞳は
いつもブルー、ブルーがベリー、
ベリーマッチ、
なんて 下手くそな英語で
果実の名前を連ねても
空は青い
陳腐化してるんだ
重なっても重なっても青いまま
俺は透明過ぎる空の下で
色の少ない貧しい絵を描いてみる
そう、パンにバターで書いたデリダの署名や
積まれた本の上の幻のアフリカから
少しずつ色彩を奪って自分のものにする
この微妙な差がよく見える気がするから
青を目に焼き付けて
より深いブルーを探す

やがて空に浮かぶ羊が勃起し
射精して雨が降ってくる
俺は毛布を脱ぎ捨てて
屋根の下で雨宿りする
脱ぎ捨てた毛布は世界へ羽ばたいて
空へと混じっていった
板の溝から降ってくる水滴に
眼球を映し出すとき
俺の網膜の中で羊の精子が受精して
視界は分裂を始める
縦に分かれ、横に分かれ、生まれる新しい世界は、aoi、母音を三つ刻んで
目覚めが始まっていく

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