●捜さないでください●現実は失敗だらけで●芸術も失敗だらけ●ちゃんと生きていく自身がありません●ハー●コリャコリャ●突然●自由なんだよって言われたってねえ●恋人没収!●だども●おらには●現実がいっぱいあるさ●芸術だっていっぱいあるわさ●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●街じゅういたるところから●猿のおもちゃたちが●姿を現わす●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●街じゅういたるところから●猿のおもちゃたちが●姿を現わす●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●シンバルを打ち鳴らしながら●猿のおもちゃたちが●ぼくのほうに向かってやってくる●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●シンバルを打ち鳴らしながら●猿のおもちゃたちが●ぼくのほうに向かってやってくる●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●脱穀の北朝鮮●朝鮮民主主義人民共和国の令嬢夫人たちが●足をあげて●足をさげて●オイ●チニ●オイ●チニ●黄色いスカートをひるがえし●オイ●チニ●オイ●チニ●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●脱穀の北朝鮮●朝鮮民主主義人民共和国の令嬢夫人たちの黄色いスカートがまくれあがり●マリリン・モンローのスカートもまくれあがり●世界じゅうの婦女子たちのスカートもまくれあがる●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●自転車は倒れ●バイクも倒れ●立て看板も倒れ●歩行者たちも倒れ●工事現場の建設作業員たちも倒れ●ぼくも道の上にへたり込む●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●吹けよ●風!●呼べよ●嵐!●沸騰する二酸化炭素●カーボン・ダイオクサイド●真っ直ぐな肩よ●来い!●沸騰する二酸化炭素●カーボン・ダイオクサイド●真っ直ぐな肩よ●来い!●東京のあるゲイ・バーでの話●ジミーちゃんから聞いたんだけど●隣に腰掛けてた三木のり平そっくりの男のひとが●ジミーちゃんに向かって●こんなこと言ったんだって●「あまりこっちを見ないで」●「恐れなくてもいいのよ」●「話しかけてくださってもいいのよ」●「でもお話ってセンスの問題でしょ」●「この方がリクエストしてくださるから赤とんぼ入れてくださるかしら」●もちろん●ジミーちゃんは●そのひととは一言も口をきいていません●このエピソード●なんべん思い出しても笑けてしまいます●エリカも笑けるわ♪●記憶の泡が●ぷかぷかと浮いている●記憶の泡が●ぷかぷかと浮いている●大きな記憶の泡たちが●ぷかぷかと浮いている●小さな記憶の泡たちが●ぷかぷかと浮いている●見ていると●小さな記憶の泡たちは●つぎつぎとぷちぷちはじけて●隣に浮かんでいる大きな記憶の泡と合わさって●ますます大きな記憶の泡となって●ぷかぷかと浮いている●ぷかぷかと浮いている●ぼくは●棒の先で●そいつをつつく●そしたら●そいつが●パチンッとはじけて●ぼくの持っている棒を●引っ張って●引っ張られたぼくは●落っこちて●ぼくが●ぷかぷかと浮いている●ぼくが●ぷかぷかと浮いている●大きなぼくの泡が●ぷかぷかと浮いている●小さなぼくの泡が●ぷかぷかと浮いている●見ていると●小さなぼくの泡は●つぎつぎとぷちぷちはじけて●隣に浮かんでいる●大きなぼくの泡と合わさって●ますます大きなぼくの泡となって●ぷかぷかと浮いている●ぷかぷかと浮いている●記憶が●棒の先で●大きなぼくの泡をつつく●そしたら●ぼくは●パチンッとはじけて●えさをやらないでください●公園には●そんな立て看板がしてあったのだけれど●ぼくは●いつものように●えさをやりに公園に行った●公園には●小さなぼくがたくさんいた●たくさんの小さなぼくは●くるってる●くるってるって●鳩のように鳴きながら●砂をひっかきまわして●地面をくしゃくしゃにしていた●ぼくは●ぼくの肉をなるべく小さくひきちぎって●投げてやった●すると●たくさんの小さなぼくは●くちばしをあけて●受けとめると●ぱくぱく●ぱくぱく●ぼくを食べた●ぼくは●ぼくの肉をひきちぎっては投げ●ひきちぎっては投げてやった●たくさんの小さなぼくは●ぱくぱく●ぱくぱく●ぼくを食べた●たくさんの小さなぼくは●ぱくぱく●ぱくぱく●ぼくを食べた●たくさんの小さなぼくは●もうぼくの身体に●肉がぜんぜんついていないのを見ると●くるってる●くるってるって●鳩のように鳴きながら●飛び去っていった●ぼくは●自分の胸の奥の●奥の奥の●骨にこびりついた●ちびっと残った肉のかけらを●骨だけになった指先で●つまんで食べた●こんな詩の一節を●むかし書いたことがあって●公園のベンチに坐りながら●持ってきた本を読んでいた●ひと休みして顔を上げると●ひとつ置いて●横に並んだベンチのうえに●となりのとなりのベンチのうえに●疲れた様子の猫が一匹●腰掛けていた●猫が首をまわして●ぼくのほうを見て●にやりと笑うので●ぼくは●猫の隣にいって●猫の肩をもんでやった●肩でも凝ってるんだろうなって思って●すると●猫はうれしそうに●くすくす笑って●公園のブランコのあるほうを眺めていた●しばらくすると●もういいよ●という合図のつもりなのか●猫は●ぼくの手の甲をひとかきすると●にやりと笑って●走り去っていった●ぼくは●自分のいたベンチにもどって●またしばらく本を読んでいた●2●3ページほど読んだところだった●前のほうから●子供たちの声がするので●向かい側のベンチのほうに目をやった●4人の小さな子供たちに囲まれて●ひとりのおじいさんが●片手をすこし上げていた●指を伸ばした右の手のさきで●その手のさきにある地面のうえで●たくさんの枯れ葉が円を描いて●くるくると回っていた●やがて●枯れ葉は●おじいさんの腕のまわりを●螺旋を描いて●くるくると回りながら●まとわりついていき●おじいさんのからだ全体をすっぽりと包み込んでしまった●そのくるくると螺旋を描いて回る枯れ葉を見て●子供たちがさらに声をあげた●おじいさんが左手をすこし上げると●こんどは●全身を包んでくるくると回っていた枯れ葉が●これまた螺旋を描きながら●左腕を伝って●地面のうえに落ちていき●地面のうえでも円を描いて●子供たちの足に●腰に●腹に●背に●手に●顔に●頭に●全身●からだじゅうに●カサカサあたりながら●くるくる回って●くるくるくるくる回って●すると●子供たちは●いっそう大きな声でさわいで●おじいちゃんに声をかけた●すてきなおじいちゃん●大好きなおじいちゃん●カッチョイイおじいちゃんって●枯葉はいつまでも●子供たちのからだを取り巻きながら●くるくる回っていた●くるくるくるくる回っていた●子供たちの歓声を聞くと●おじいさんは●すごく喜んで●けたけた笑って●軽快にスキップしながら●公園から走り去っていった●でも●子供たちは●おじいさんよりすごくって●手を上げると●子供たちのまわりで●そこらじゅうのものが●ぐるぐる回りだした●そばの大人たちは悲鳴をあげて舞い上がり●自転車は舞い上がり●立て看板は舞い上がり●植わっていた樹木は根っこごと●ずぼっと抜けて舞い上がり●ブランコは鎖からちぎれ●シーソーの板は軸からはずれ●鉄棒さえ支柱ごと地面から抜けて舞い上がり●ぐるぐるぐるぐる回りだした●ぼくのからだも宙に舞って●ぐるぐる回りだした●世界が●子供たちのまわりで●ぐるぐるぐるぐる回った●突然●子供たちが手を下ろすと●みんな●どすん●どすん●と落っこちて●ぼくは手に持っていた本がなくなっていたから●そのあと公園のなかを●はぐれた本を探して●ずいぶんと長い間かかって探さなければならなかった●イエイ!●仕事帰りに寄った●烏丸のジュンク堂で●ぼくの作品が載ってる号でも見ようと思って●國文學の最新号とバックナンバーが置いてある棚を見たら●ぼくの原稿が載っているはずの号がないので●店員さんに訊くと●発売日が20日から27日に変更になっていた●うううううん●そういえば●去年のユリイカの増刊号も●ぼくの書いている号の発売日が延期されたぞ●ま●偶然だと思うけど●しかし●きょう●店員さんが見せてくれた書店向けのその27日発売の増刊号の予告のチラシ●執筆者の数が●いつもの号の倍近く●昨年のユリイカの増刊号の『タルホ』特集もものすごく分厚かったけど●今回の國文學の臨時増刊号●『読んでおくべき/おすすめの短編小説50 外国と日本』も分厚そう●ああ●そう●きょう●新しい詩集のゲラの校正をしていて●ぼくが26歳のときのことを書いているところがあって●そのころ知り合った20歳の青年のことを●思い出していて●ああ●ヘッセなら●これを存在の秘密とでも言うんだろうなあ●と思った●彼は福岡出身で●高校を出てすぐ●18才から京都で●昼間はビリヤード店で●夜はスナックでアルバイトをしていると言っていた●ぼくが下鴨に住んでいたころね●ぼくが住んでいたワンルーム・マンションの向かい側に●そのビリヤード店があって●彼が出てくるところで●ぼくと目が合って●で●ぼくのほうから声をかけて●そのあとちょこっとしゃべって●それから口をきくようになったのだけれど●3回目か●4回目に会ってしゃべっていたときかな●別れ際に●「こんどゆっくり男同士の話をしましょう」と言われて●びっくりして●いままでも男同士だったし●ええっ?●という感じで●またそのときの彼の目つきがとてつもなく真剣だったので●それから●ぼくは彼を避けたのだった●避けるようになったのだった●ぼくは●彼はふつうの男の子だと思っていたから●ふつうの男の子とはふつうに接しないといけない●と●ぼくは思っていたのだ●そのときのぼくは●ね●ま●いまでもそうだけどさ●ぼくは自分の大事な感情や気持ちから●逃げることがよくあって●いまから思うと●大切なひとを●大切な時間を●たくさんすり抜けさせてしまったんだなあと思う●ああ●ヘッセなら●これを存在の秘密とでも言うんだろうなあ●そう思った●存在の秘密●ヘッセが言ってたかな●もしかしたら言ってたかもしれない●言ってなかったら●ぼくが考え出した言葉ってことになるけど●なんだかどこかで見たような記憶もある●ありそうな言葉だもんね●ま●どうでもいいんだけどね●あ●そうそう●詩集の校正をしていた喫茶店でね●高瀬川を見下ろしながら●「ソワレ」っていう京都では有名な喫茶店の二階でね●こんなこと考えていた●思い出していた●考えながら思い出していた●思い出しながら考えていた●ぼくは●ほんとうに●何人もの●もしかしたら深い付き合いになっていたかもしれないひとたちを避けてきたのだった●と●いま46歳で●もう●愛する苦しさも●愛されない苦しさも●若いときほどではないのだけれど●記憶はいつまでも自分を苦しめる●まあ●苦しむのが好きなんだろうね●ぼくは●笑●人生というものが●ぼくのもとからすぐに通り過ぎていくものであるということを●若いときのぼくは知らなかった●いまのぼくは知っていて●古い記憶に苦しめられつつも●思い出しては●ああ●あのとき●こうしておいたらよかったのになあとか●ああしておいたらよかったのになあとか●考えたりして●おいしい時間を過ごしているっていう●ああ●ほんまにオジンやな●チャン●チャン●で●その青年とは●半年くらい経ってから●高野にある「高野アリーナ」だったかな●そのホテルのプールで再会して●いっしょにソフトドリンクを飲んだのだけれど●コーラだったと思う●でも●そのとき●彼は彼の友だちと来ていて●その友だちに●ぼくのことを説明しているときに●その友だちが●きつい目つきで●ぼくのことを見つめていたので●それから●ぼくはあまりしゃべらずに●ただ●彼の顔と●水泳を中学から高校までしていたという●すこしぽちゃっとしたからだつきの●彼のからだを眺めながら●夏のきつい日差しで●自分のからだを焼いていた●というのはちょこっと嘘で●というか●もうすこし詳しく書くと●彼の股間を●青いビキニの布地を通して●横にストライプの細い線が二本はいった●青いビキニの布地を通して●もっこりと浮かび上がった彼のチンポコの形を●ジーパンのときとは違って●はっきりうつった彼のチンポコの形を●じっと眺めていた●ぼくは彼の勃起したチンポコをくわえたかった●ぼくは彼の勃起したチンポコをくわえたかった●たぶん●彼の体型によく似た●太くて短いチンポコね●あ●20代後半まで●ぼくは●夏には真っ黒に日焼けした青年だったのだ●若いときの写真は●ぼくの詩集の『Forest。』にのっけているので●カヴァーをはずすと本体の表紙に●ぼくの若いときの写真がたくさんついているので●見る機会があれば●見てちょうだいね●チャン●チャン●じゃないや●もうちょっと考えないとだめだね●いまでも苦しんでるんだからね●若いときの苦しみは●自分の気持ちだけを考えての苦しみで●それで強烈に苦しんでいたのね●相手の気持ちを考えもせずに●相手の苦しみをわかろうともせずにね●でも●いまの苦しみは●相手の苦しみをも感じとりながらの苦しみで●けっしてひとりよがりの苦しみではないから●若いときの苦しみとは違っていて●より苦しい部分もあるんだけど●それでも●深いけれど●強烈ではなくなったわけで●それは意義のある苦しみだとも言えるわけでね●つきつめて考えればね●未知ならぬ未知●既知ならぬ既知●オキチならぬオキチ●未知なる未知●既知なる既知●オキチなるオキチ●オッ●キチ●洗剤自我●なんか●いいっしょ?●いいでしょ?●洗剤自我●ゴシゴシ●キュッって●あちゃ●ghost into tears●もちろん●burst into tears●のパスティーシュ●ね●涙に幽霊する●と訳する●ゴーストは翻訳機械でもある●ゴーストは仮定の存在であるにもかかわらず●近づいてくるときにもわかるし●離れていくときにもわかる●そばにいてじっとしているときにも●その気配を感じとることができるのだ●Wake up,the ghost.●たくさんのメモを見渡していると●ゴーストの設定が●はじめに設定していた立ち位置と●多少変わっていることに気づかせられる●そのずれもまた楽しい●ルンル●ルンル●ル〜●日々●これ●口実●ゴーストと集合論●集合論といっても●公理的集合論のほうではなくて●素朴集合論のほうだけど●ゴーストと集合論を●空集合を梃子として●照応させることができた●どの集合も空集合を部分集合とするが●それらは●ただひとつのまったく同じ空集合である●ファイ↑●Φ●ファイ↓●したがって●分裂機械の作品のなかで●主人公の青年が詩人と交わした会話を思い出して書いたところで●詩人が●ゴーストを複数形ではなく●単数形として扱っていたことも●論理的に十全たる整合性があって●あると思っていて●数年前に●dioに●数学的な記述でもって●集合論と自我論を対比させて●論考を書いたことがあったが●その論考の発展形として●分裂機械19の散文詩を書くことができた●ファイ↑●Φ●ファイ↓●『THE GATES OF DELIRIUM。』は●ぼくの作品のなかでも●とびきり複雑な構成の散文詩にするつもりで●井原秀治さんに捧げて●『The Wasteless Land.IV』として書肆山田から詩集として上梓する予定●3●4年後にね●さっき●ノヴァーリスをノートしていて●はっ●として●グッ●なのじゃ●ふるいじゃろう●笑っておくれ●そだ!●シェイクスピアと亡霊って●すっごい深いつながりがあって●『ハムレット』において●亡き父親の霊である亡霊の言葉によって●ハムレットの人格が一変するように●亡霊が人間に影響を与えるということは●重々明白で●『リチャード三世』の第五幕・第三場に●「待て!●何だ●夢か●ああ●臆病な良心め●どこまでおれを苦しめる!」●というセリフがあって●夢のなかで亡霊に責め立てられるのも●じつは●自分の良心が自分自身を咎めるからであって●同じく●第五幕・第三場に●「影が●ゆうべ●このリチャードの魂をふるえ上がらせたのだ」●というセリフがあって●影=亡霊●とする記述が見られるんだけど●『リア王』のセリフには●「わしはだれじゃ?」●というのがあって●それに答えて●「リアの影」というのがあるのだけれど●夢と影●自我とゴースト●この4つのものが●シェイクスピアのなかで●ぼくのなかで●ぐるぐる回っている●ファイ↑●Φ●ファイ↓●自我=夢●夢=影●影=亡霊●亡霊=自我●この数日●シェイクスピアを読み直してよかったな●と●つくづく思う●以前に●ミクシィの日記にも書いた●『あらし』のなかにある●「わたしたちは夢と同じものでつくられている」●といったセリフや●『ハムレット』のなかにある●第一幕・第三場の●「影?●そうとも●みんな影法師さ●一時の気まぐれだ」●といったセリフや●同じく●第二幕・第二場の●「夢自体●影にすぎない」●といったセリフに表わされるように●シェイクスピアの戯曲には●よく●ぼくたちの実体が●ゴーストとちっとも違わないってことが書かれてあるような気がする●うううううん●やっぱり●ぼくは●霊●ゴーストなんだ●それで●霊は零で●ぼくはゼロで●なんもなしだったのか●今夜は●『リア王』を再読する予定●第一幕・第一場のセリフ●「何もないところからは●何も生まれない」●について考えたくて●あ●もうそろそろ寝る時間かな●ナボナ●ロヒプノール●ピーゼットシー●ワイパックスを一錠ずつ取り出し●手のひらのうえにのせて●パクッ●それから水をゴクゴク●で●眠るまでの一時間ほどのあいだ●シェイクスピヒイイイイイイイイイイア●と●エリオットのまね●笑●できることなら●生きているあいだに●顔を見たひとみんな●声を聞いたひとみんな●そばにいたひとみんなを●こころにとどめておきたい●とかなんとか●霊は●ゴーストは●蜘蛛のように●くるくると巻き取るのだ●時間を●空間を●出来事を●くるくると巻き取っていくのだ●そのヴィジョンがくっきりと目に浮かぶ●愛によって●理解しようとする意図によって●糸によって●時間を●空間を●出来事を●くるくると巻き取っていくのだ●ひゃひゃひゃ●意図は●糸なのね●ひゃひゃひゃひゃひゃ●ワードの機能は●無意識の意図を●糸を●つむぎだすのだね●自分のメモに●「表現とは認識である」とあった●日付はない●ひと月ほど前のものだろうか●わたしが知らないことを●わたしの書いた言葉が知っている●ということがある●しかも●よくあることなのだ●それゆえ●よくよく吟味しなければならない●わたしの言葉が●認識を先取りして●時間と空間と出来事を●くるくると巻き取っていくのだ●「表現とは認識である」●この短いフレーズが気に入っている●発注リストという言葉を読み間違えて●発狂リストと読んでしまった●お上品発狂●おせじ発狂●携帯電話発狂●注文発狂●匍匐前進発狂●キーボード発狂●高層ビル発狂●神ヒコウキ発狂●歯磨き発狂●洗顔発狂●小銭発狂●ティッシュ発狂●ノート発狂●鉛筆発狂●口紅発狂●カレンダー発狂●ときどき駅のホームや道端なんかで●わけわからんこと言うてるひとがいるけど●手話で発狂を表わしてもいいと思う●オフィーリアの発狂を●手話で表わしたらどんなんなるんやろうか●きれいな手の舞いになるんやろうか●おすもうさんも発狂●ハッキョー●のこった●のこった●てね●後味すっきり●発狂も●やっぱ後味よね●ええ●ええ●それでも●ぼくにはまだ●虫の言葉はわかりません●あたりまえだけど●あたりまえのことも書いておきたいのだ●沖縄では●塩つぶをコップの半分ほども飲むと●蟻の言葉がわかるという言い伝えがあるんだけど●死んじゃうんじゃないの●塩の致死量って●どれくらいか忘れたけど●むかし●京都の進学高校で●洛星高校だったかな●運動会の日に●ある競技でコップ一杯分の塩つぶを飲ませられて●生徒が何人か死にかけたっていう話を聞いたことがある●その場で倒れて救急車で病院に運ばれたらしいけど●朝●通勤の途中に寄った本屋さんで●シェイクスピアの『あらし』をちらりと読んでたら●「ああ●人間てすばらしい」というセリフがあって●人間手●すばらしい●で●違うページをめくったら●ちんちんかもかも●ってセリフがあって●あれ●こんなセリフあったんやって思って●帰ってきてから●しばらく●ちんちんかもかもって●そういえば●むかし読んだことがあって●笑ったかなあって●美しい●オフィーリアの●溺れた手の舞いが●スタージョンの●ビアンカの手を思い出させて●ええと●いまのアメリカの大統領●名前忘れちゃった●あ●ブッシュね●あのひと●完全にいかれちゃってるよね●戦争起こして●ゴルフして●あんなにうれしそうな笑顔ができるんだもんね●戦争が好きなひとの笑顔って●こわいにゃ●腹筋ボコボコのカニ●毎日ボコボコ●ボコボコ●爆撃してるのね●あ●で●手話発狂●そうそう●そだった●手で●ぐにぐにしてるひとがいたら●それは手話発狂なんやって●そだった●『ハムレット』のなかで●オフィーリアが発狂して●川辺で歌い踊りながら●川に落ちて死んだ●と●告げるシーンがあって●もちろん●美しい声で歌を歌いながら●若い娘らしく可憐に踊りながら●川に落ちるんやろうけど●どんなんやったんやろうかって●きれいな手の舞いやったんやろうかって●手に目が●目に手が●たたんた●たん●たた〜●たたんた●たん●たた〜●軽度から重度まで●いろいろな症状の発狂リスト●程度の違いは多々●多々●たたんた●たん●たた〜●たたんた●たん●たた〜●で●ぼくたちは●思い出でできている●ぼくたちは●たくさんの思い出と嘘からできている●ぼくたちは●たくさんの嘘とたくさんのもしもからできている●嘘●嘘●嘘●もしも●もしも●もしも●ぼくたちは●百億の嘘と千億のもしもからできている●それは●けっして●だれにも●うばわれることのない●ときどきノイローゼの仮面ライダー●キキーって●ときどきショッカーになる●「あんた●仮面ライダーなんやから●悪モンのショッカーになったらあかんがな」●「変身願望があるんです」●「正義の味方なんやから●そんな願望持ったら●あかんがな」●「そやけど●どうしても●ときどきショッカー隊員になりたいんです」●「病気やな」●「ただの変身願望なんです」●「病気だよ」●「キキー!」●自分の感情のなかで●どれが本物なのか●どれが本物でないのか●そんなことは●わかりはしない●そう言うと●まるで覚悟を決めた人身御供のように●わたしは●その場に身を沈めていったのであった●ずぶずぶずぶ〜●百億の嘘と千億のもしも●きょう●『The Wasteless Land. III』の校正を●仕事場の昼休みにしていて●「ぶつぶつとつぶやいていた」●と書いてあったのを●[putsuputsu]と[putsu]やいていた●と発音して●これっていいなって思ったり●[tsuputsupu]と[tsupu]やくでもいいかなって●思ったりしていた●市場の仕事って●夜明け前からあって●って言葉を●昼過ぎに職場で耳にして●ああ●何年前だったろう●十年くらい前かな●ノブユキに似た青年が●ぼくのこと●「タイプですよ」って●「付き合いたい」って言ってくれたのは●でも●そのとき●ぼくには●タカシっていう恋人がいて●タカシのことはタンタンって呼んでいたのだけれど●ノブユキに似た彼には何も言えなかった●彼は●市場で働いてるとか言ってた●「朝●はやいんですよ●夜中の2時くらいには起きて」●だったかな●だから●会えるとしても●月に一回ぐらいしか●と言われて●ぼくには●壊れかけの関係の恋人がいて●タンタンのことね●壊れかけでも●恋人だったから●で●彼には●ごめんねって言って●梅田のゲイ・ポルノの映画館で●東梅田ローズっていったかな●彼といっしょに●トイレの大のほうに入って●ぼくたちは抱き合い●キスをして●彼のチンポコを●ぼくはくわえて●彼のアヌスに指を入れて●ぼくは彼のチンポコをくわえながらこすって●こすりながら彼のチンポコをくわえて●彼は目をほそめて●声を出して●あえぎながら●ぼくの口のなかでいって●彼は目をほそめて●あえぎながら●ぼくの口のなかでいって●すると●アヌスがきゅって締まって●ぼくの指がきゅって締めつけられて●ああ●ノブユキ●ほんとに似てたよ●きみにうりふたつ●そっくりだったよ●もしも●あのとき●もしも●あのとき●もしも●あのとき●ぼくが付き合おうかって●そんな返事をしてたらって●そんな●もしも●もしもが●百億も●千億もあって●ぼくの頭のなかで●[tsuputsupu]と[tsupu]やいている●つぷつぷとつぷやいている●[tsuputsupu]と[tsupu]やいている●つぷつぷとつぷやいている●ぼくたちは●百億の嘘と千億のもしもからできている●ぼくたちは●もしも●もしもでいっぱいだ●ぼくは何がしたかったんだろう●ちゃんと愛しただろうか●ぜんぜん自身がない●百億の嘘と千億のもしもを抱えて●ぼくは●[tsuputsupu]と[tsupu]やいている●つぷつぷとつぷやいている●つぷつぷと●通報!●通報!●蘇生につぐ蘇生で●前日の受難につぐ受難から●凍結地雷という兵器を想像した●踏むと凍結するというもの●きのう●dioのメンバーで●雪野くんという●まだ京都大学の一回生の男の子がいて●その子が●この夏●哲学書をたくさん読んでいたらしく●「ぼくって●まだ不幸を知らないんです●これで哲学を理解できるでしょうか」●って訊いてきた●「不幸なんて●どこにでもあるやんか●ちょっとしたことでも●不幸の種になるんやで」●って言ってあげた●いや●むしろちょっとしたことやからこそ●不幸の種になるといってもよい●ぼくなら唇の下のほくろ●なんだか泣き虫みたいで●情けない●あ●情けない話やなくて●不幸の話やった●そうやな●漫才師の「麒麟」っていうコンビの片割れが●むかし●公園で暮らしたことがあるって●そんなことを書いた本があって●売れているらしくってって●このあいだの日曜日に会った友だちが●ジミーちゃんね●「今●本屋で探しても●ないくらいやで」●とのこと●ほら●他人の不幸も●そこらじゅうに落ちてるやんか●でも●赤ちゃんがいてると●不幸が●どこかよそに行ってしまうんやろうなあ●アジアやアフリカの貧しい国の子供たちの顔って●輝いてるもんなあ●アジア●アフリカかあ●行ったことないけど●写真見てたら●そんな気がするなあ●おいらのこの感想も浅いんやろなあ●そこのほんまの現実なんて知らんもんなあ●でも●公園で暮らしてた●っていうエピソードは●レイナルド・アレナスを思い起こさせる●レイナルド・アレナス●『夜になる前に』という映画や●そのタイトルの自伝で有名な作家●彼の尋常でない●男の漁り方は●必見!●必読!●そういえば●ラテン・アメリカの作家の作品には●ゲイの発展場とか●よく出てくるけど●女性にも理解できるんやろうか●まだ訊いたことないけど●また●訊けるようなことちゃうけど●笑●男やったら●ゲイでなくてもわかるような気がするけど●ちゃうかなあ●どやろか●笑●道徳とは技術である●多くの人間が道徳につまずく●あるいは●つまずくのを怖れる●道徳のくびきを逃れようとする者は多いが●逃れ切ることができる者は少ない●道徳は●まったき他人がつくるものではない●自分のこころのなかの他人がつくるものである●いわば●自分のこころに振り回されているのである●パピプペポポ詩って●タイトルにしようかな●うんこの本をきのう買ったから●うんこのことを書くにょ●『うんことトイレの考現学』っちゅう本だにょ●うんこの話も奥が深いんだにょ●しかし●ひかし●ひかひ●ひひひ●そんじょそこらにあるうんこの詩を書くにょ●さわったら●うんこになる詩だにょ●嗅いだら●うんこの臭いがするにょ●ぼくは●そんな滋賀●柿●鯛●にょ●阿部さん●黒丸って●それひとつだけでも●そうとう美しいですものね●で●砲丸が空から落ちてくるように●黒丸でページを埋め尽くすと●それはもう●美しい紙面に●というわけで●戦争を純粋に楽しむための再教育プログラム●こんどの詩集は●全ページ黒丸で●埋め尽くしました●文字ではなく●黒丸だけを見るために●ぱらぱらとページをめくる●といった方も●いらっしゃるんじゃないかしら●と●ひそかに●ほくそえんでいます●ぼくは●ぱらぱら●自分でしてみて●悦に入ってました●書肆山田さんから●ゲラの第二稿がまだ届かないので●読書三昧です●笑●そろそろ睡眠薬が効いてきたかな●眠くなってきた●阿部さん●おはようございます●すごいはやいですね●ぼくはいま起きました●真ん中の弟を●下の弟が殺した夢を見ました●それを継母がどうしても否定するので●ぼくが下の弟を●サーカスの練習で使う●空中ブランコの補助網の上で●弟を下に落とそうと脅かしながら●白状させようとするのですが●白状しません●最後まで白状しませんでしたが●ぼくは●真ん中の弟の骨についた肉を食べて●その骨をいったん台所の流しの●三角ゴミ入れのなかに入れて●またそれを拾い出して●ズボンのポケットに入れました●奇妙な夢でした●意味わからん夢ですね●スイカを見る●スイカになる●真夜中の雨の郵便局●ぼくの新しい詩集の校正をようやく終えたのが●夜の12時すぎ●さっき●で●歩いて7●8分のところにある●右京郵便局に●こんな夜中でも●ぼくと同じ時間に●二組みのひとたちが●郵便物を受け取りに●あるいは●書留を出しにやってきていた●昼には●四条木屋町の「ソワレ」という有名な喫茶店に行って●ジミーちゃんに●ぼくの作品が載ってる●國文學の増刊号を読んでもらって●感想を聞いたり●ぼくの新しい詩集の初校を見てもらって●ぼくが直したところ以外に●直さなければならない箇所がないか●ざっと見てもらったりしていたのだけれど●場所が変わると●気分が変わるので●ぼく自身が●きのうまで気がつかなかったミスを見つけて●そこで●5箇所くらい手を入れた●ああ●文章って怖いなあ●と思った●なんで二週間近く見ていて●気がつかなかったんやろうか●また文章と言ったのは●こんどのぼくの詩集って●改行詩じゃないのね●とくに●『The Wasteless Land.III』は●一ヶ所も改行していないので●書肆山田の大泉さんも●ぼくのその詩集の詩をごらんになって●マグリットの●『これはパイプではない』という作品が思い出されました●と手紙に書いてくださったのだけれど●ということは●「これは詩ではない」という詩を書いたということなのか●それとも●単に「これは詩ではない」というシロモノを書いたということなのか●まあ●ぼくは●自分の書いたものが●詩に分類されるから●詩と言っているだけで●詩と呼ばれなくても●詩でなくてもいいのだけれど●まあ●詩のようなものであればいいのだけれど●あるいは●詩のマガイモノといったものでもいいのだけれど●ぼくは●ぼくの書いたものを見て●読者がキョトンとしてくれたら●うれしいっていう●ただそれだけの●単純なひとなのだけれど●ぼくは●ああ●ぼくは●詩を書くことで●いったい何を得たかったのだろう●わからない●いまだによくわからないのだけれど●ぼくは●詩を書くことで●かえって何かを失ってしまったような気がするのだ●その何かが何か●これまた●ぼくにはよくわからないのだけれど●もしも得たかったものと●失ってしまったものとが同じものだとしたら●同じものだったとしたら●いったいぼくは●ぼくは●中学2年のとき●祇園の家の改築で●一年間ほど●醍醐にいた●一言寺(いちごんじ)という寺が坂の上にあって●両親はその坂道のうえのほうに家を買って●ぼくたちはしばらくそこに住んでいた●引っ越してすぐのことだと思う●友だちがひとり●自転車に乗って●東山から●わざわざたずねてきてくれた●土曜日だったのかな●友だちは●ぼくんちに泊まった●夜中にベランダに出て●夜空を眺めながら話をしてたのかな●空に浮かんだ月が●いつになく大きくて明るく輝いていたような気がする●でも●そのときの話の内容はおぼえていない●ぼくはその友だちのことが好きだったのだけど●ぼくは●まだセックスの仕方も知らなかったし●キスの仕方も知らなかったから●あ●これは経験ありか●嘘つきだな●ぼくは●笑●でも●ぼくからしたことはなかったから●したいという衝動はあったのだろうけど●はげしい衝動がね●笑●でも●どういうふうにしたら●その雰囲気にできるか●まったくわからなかったから●いまなら●ぼくのこころのなかの暗闇に●ほんのすこし手を伸ばせば●その暗闇の一部を引っつかんで●そいつを相手に投げつけてやればいいんだと●知っているんだけど●しかし●もうそんな機会は●『Street Life。』●こんなタイトルの詩を●何年か前に書いた●いま手元に原稿の写しがないので●正確に引用できないんだけど●その詩は●ぼくが手首を切って風呂場で死んでも●すぐに傷が治って生き返って●ビルから飛び降りて頭を割って死んでも●すぐに元の姿にもどって●洗面器に水を張って顔をつけて溺れ死んでも●すぐに息を吹き返して●そうやって何度も死んで●何度も生き返るという●ぼくの自殺と再生の描写のあいだに●ぼくとセックスした男の子のことを書いたものなんだけど●その男の子には●彼女が何人もいて●でも●ときどきは●男のほうがいいからって●月に一度くらいって言ってたかな●ぼくとポルノ映画館で出会って●そのあと●男同士でも入れるラブ・ホテルに行って●セックスして●彼はアナル・セックスが久しぶりらしくて●かなり痛がってたけど●たしかに●締まりはよかった●大きなお尻だった●がっちり体型だったから●シックスナインもしたし●後背位で挿入しながら●尻たぶをしばいたりもした●で●このように●ぼくの死と再生というぼくの精神的現実と●その男の子とのセックスという肉体的現実を交互に書いていったものだったのだけれど●その男の子がぼくに話してくれたことも盛り込んだのだけれど●そのときの話を●完全には思い出すことができない●彼は●女性はいじめたい対象で●大阪のSMクラブにまで行くと言っていた●男には●いじめられたいらしいんだけど●はじめての経験は●スピード出し過ぎでつかまったときの●白バイ警官で●そいつに●ちんこつかまれて●くわえられて●口のなかでいった●とかなんとか●ぼくは最初のセックスで●相手に「いっしょにいこう」と言われて●えっ?●どこに?●って言ったバカなんだけど●で●その男の子は●あ●この男の子ってのは●ぼくの最初のセックスの相手じゃなくて●Street Life●の男の子のほうね●で●その男の子は●中国人で●小学校のときに日本にきて●中学しか出てなくて●いま26歳で●学歴がないから●中学を出てからずっと水商売で●いまはキャバクラの支配人をしていて●女をひとり●かこっていて●部屋まで借りてやって●でも●ほんまに愛しとる女もいるんやで●そいつには俺がSやいうことは知られてへんねんで●もちろん●ときどき男とセックスするなんてぜんぜん知らんねんで●想像もしたこともないやろなあ●とかなんとか●そんな話をしていて●ぼくは●そんなことを詩の言葉にして●ぼくが●何べん自殺しても●生き返ってしまうという連のあいだにはさんで●ええと●この詩●どなたかお持ちでないでしょうか●ある同人誌に掲載されたんですけど●その同人誌をいま持ってないんですよ●ワープロを使っていたときのもので●パソコンを買ったときに●ワープロとフロッピー・ディスクをいっしょに捨ててしまったので●もしその同人誌をお持ちでしたら●コピーをお送りください●送料とコピー代金をお返しします●同人誌の名前も忘れちゃったけど●『Street Life。』●いい詩だったような記憶がある●言葉はさまざまなものを招く●その最たるものは諺どおり●禍である●阿部さん●場所って●不思議な力を持っているものなのですね●「ソワレ」で●それまで見えていなかったものが●見えてしまったのですもの●ひさしぶりに●哲学的な啓示の瞬間を味わいました●「われわれの手のなかには別の風景もある」●含蓄のあるお言葉だと思います●わたしたち自身も場所なので●わたしたちを取り囲む外的な場所自体の記憶+ロゴス(概念形成力・概念形成傾向)と●わたしたち自身の内的な場所の記憶+ロゴス(概念形成力・概念形成傾向)が●作用し合っているというわけですね●わたしたちだけではなく●場の記憶やロゴス(概念形成力・概念形成傾向)も●随時変化するものなのですね●ヘラクレイトスの●「だれも同じ川に二度入ることはできない●なぜなら●二度目に入るときには●その川はすでに同じ川ではなく●かつまた●そのひとも●すでに同じひとではないからである」といった言葉が思い起こされました●薔薇窗16号●太郎ちゃんのジュネ論●明解さんの引用が面白い位置にあって●このスタイルって●つづけてほしいなあって思いました●かわいらしかったですよ●タカトさんのお歌も●幽玄な感触が濃厚なもので●味わい深く感じました●ああ●雨脚がつよくて●雨音がつよくて●なんか●ぼくのなかにあるさまざまな雑音が●ぼくのなかから流れ出て●それが雨音に吸収されて●しだいにぼくがきれいになっていくような気がしたのですが●そのうち●ぼく自身が雨音になっていくような気がして●ぼくそのものが消え去ってしまうのではないかとまで思われたのでした●ぼく自体が雑音だったのでしょうか●阿部さん●記憶+ロゴス(概念形成力・概念形成傾向)●と書きましたが●記憶=ロゴス(概念形成力・概念形成傾向)●かもしれませんね●こういったことを考えるのも好きです●ひとりひとりを●ひとつひとつの層として考えれば●世界はわたしたちの層と層で積み重なっているという感じですね●でも●わたしたち自身が質的に異なるいくつもの層からなるものだとしたら●世界はそうとうな量●さまざまなもので積み重なってできているものとも思われますね●世界の場所という場所は●数多くの層を●数多くのアイデンティティを持っているということになりますね●その層と層とのあいだを●また●自分のなかの層と層とのあいだを●あるいは●世界と自分との層と層とのあいだを●いかに自由に移動できるか●表現でどこまで到達し●自分のものとすることができるか●どのぐらいの層まで把握し●同化することができるか●わあ●わくわくしてきました●ぼくも●もっともっと深い作品を書かねばという気になってきました●おとつい●「ぽえざる」で●年配の女性の方が●「みんなきみのことが好きだった。」を手にとってくださり●目次をちらりとごらんになられて●「すてきね」とおっしゃって●買って行ってくださったのですが●ぼくは●なんて返事をするべきかわからなくって●ただ「ありがとうございます」と言っただけで●お金を受け取ったあと●ぺこりと頭をさげただけだったのですが●きのうと●きょう●その年配の女性の方のことが思い出されて●なんていうのでしょうか●幸福というものが●どういうものか●46歳にもなって●まだわからないところがあるのですが●おとつい耳にした●「すてきね」という●ささやくような●つぶやくようなその方の声が●耳から離れません●来年●また●「ぽえざる」でお会いしたときに●なんておっしゃってくださるのか●なにもおっしゃってくださらないのか●わかりませんが●「すてきね」という●その方の声が●すさんだぼくの耳を●ずいぶんと癒してくださったように思います●お名前もうかがわないで●なんて失礼なぼくでしょう●でも●このことは●創作というものがなにか●その一面を●ぼくに教えてくれたような気がします●自分さえ満足できるものができればいいと思っている●思っているのですが●「すてきね」という声に●そう思っている自分を●著しく恥ずかしいと思ったわけです●うん●勉強●勉強●まあ●こんな殊勝な思いにかられるのも●ほんのすこしのあいだだけなんだろうけどね●笑●言葉は同じような意味の言葉によっても●またまったく異なるような意味の言葉によっても吟味される●ユリイカの2003年4月号●特集は●「詩集のつくり方」●むかし書いた自分の文章を読み返す●自分自身の言葉に出会う●かつて自分が書いた言葉に●はっとさせられる●もちろん●体験が●言葉の意味を教えてくれることもあるのだけれど●言葉の方が●体験よりはやく●自分の目の前に現れていたことにふと気づく●ふだんは気がつかないうちに●言葉と体験が補い合って●互いに深くなって●さらに深い意味を持つものとなって●ぼくも深くなっているのだろうけれど●きのう●シンちゃんに●「許す気持ちがあれば●あなたはもっと深く●自分のことがわかるだろうし●他人のこともわかるだろう●むかしからそうだったけれど●あなたには他人を理解する能力がまったく欠けている」●と言われた●ぼくは●今年亡くなった父のことについて電話で話していたのだ●「ひとそれぞれが経験しなければならないことがある●ひとそれぞれに学ぶべきことがある●学ぶべきことが異なるのだ●ひとを見て●自分を見て●それがわからないのか」●とも言われた●深い言葉だと思った●と同時に●46歳にもなって●こんなことが●自覚できていなかった自分が恥ずかしいと思った●自分を学べ●ということなのだね●むずかしい●と●そう思わせるのは●ぼくが●人間として小さいからだ●それは●ひとを愛する気持ちが少ないからか●だとすれば●ぼくは●愛することを学ばなければならない●46歳にもなったぼくだけれど●でも●ぼくは●これから愛することを学べるのだろうか●自分を学べ●の前に●愛することを学べ●と書いておく●きょうの一日の残りの時間は●それを念頭において生きてみよう●あとちょっとで●きょう一日が終わるけど●笑●でも●ぼくの場合●愛することとは何か●と考えて●それで学んだ気になるかもしれない●それでは愛することにはならないのだけれど●無理かなあ●愛すること●自分を学ぶこと●うううん●ひとまず顔を洗って●歯を磨いて●おやすみ●笑●トマトケチャップの神さまは●トマトの民の祈りの声を聞き届けてはくださらない●だって●トマトケチャップの神さまだからね●彼氏は裸族●ぜったい裸族がいいわ●彼の衣装は裸だった●ぼくに向かって微笑んでくれた●彼の顔は●こぼれ出る太陽だった●ぼくは●目をほそめて●彼を見上げた●うつくしい日々の●記憶のひとつだった●そのときにしか見れないものがある●その年代にしか見れないうつくしいものがある●そのときにしか見れない光がある●その年代でしか感じとれない光がある●言葉が●それらを●ときたま想起させる●思い出させる●タカトさん●きょうのお昼は●東山に桜を見に行きました●八坂神社の円山公園に行き●しだれ桜を見てまいりました●散り桜もちらほらと見受けられました●帰りに四条木屋町を流れる高瀬川のあたりを歩いておりますと●花筏というのでしょうか●タカトさんのミクシィの日記を拝読していて●この言葉を知りましたが●川沿いに植えられた桜の花びらが散り落ちて●川一面に流れておりました●また●いたるところで●詩は●うんこのように●毎日●毎日●ぶりぶりってひりだされているのですが●そのことには気がつかないで●いかにも「詩」みたいなものにしか反応できないひとが●たくさんいそうですね●すました顔で●でっかいうんこをする彼女が欲しいと●そんなことを言う●男の子がいてもいいと思います●うんこ色のパンツをはいた●ひきがえるが●白い雲にむかって●ぶりぶり●ぶりぶりっと●青いうんこを●ひっかけていきます●そしたら●曇ってた空が●たちまち●青く青く●晴れていきました●うんこ色のパンツをはいた●ひきがえるに●敬礼!●ペコリ●笑●くくく●昨年の冬に●近所の公園で踏みました●草のなかで●気づかずに●こんもりと●くやしかった●笑●そういえば●雲詩人とか●台所詩人とか●賞詩人とか●いろいろいますが●すばらしいですね●ぼくは●うううん●ぼくは●ぼこぼこ詩人です●嘘です●ぼくは●うんこ詩人です●ぼくは●でっかいうんこになってやろうと思っています●一度形成されたヴィジョンは●音楽が頭のなかで再生されるように●何度でも頭のなかで再生される●わざと間違った考察をすること●わざと間違えてみせること●わざと間違えてやること●タカトさん●「言葉の真の『主体』とは誰か」ですか●書きつけた者でもなく●読む者でもなく●言葉自体でもなく●だったら●こわいですね●じっさいは書きつけた者でもあり●読む者でもあり●言葉自体でもあるというところでしょうか●「わたし」という言葉が●何十億人という人たちに使用されており●それがただひとりの人間を表わすこともあれば●そうでない場合もあるということ●いまさらに考えますと●わたしが記号になったり●記号がわたしになったり●そんなことなどあたりまえのことなのでしょうけれど●あらためて考えますと●不思議なことのように思われますが●だからこそ●容易に物語のなかに入りこめたり●他者の経験を自分のことのように感じとれたりするのでしょうね●きょう●dioの締め切り日だと思ってた●だけど違ってた●一日●日にちを間違えてた●一日もうけたって感じ●ワルツじゃ●いや●アルツか●笑●笑えよ●おもろかったら●笑えよ●こんなもんじゃ笑われへんか●光が波立つ水面で乱反射するように●話をしているあいだに●言葉はさまざまなニュアンスにゆれる●交わされる言葉が●さまざまな表象を●さまざまな意味概念を表わす●それというのも●わたしたち自身が揺れる水面だからだ●ユリイカに投稿しているとき●過去のユリイカに掲載された詩人たちの投稿詩を読んでいると●「きみの日曜日に傷をつけて●ごめんね」みたいな詩句があって●感心した●それから●たびたび●この言葉どおりの気持ちが●ぼくのこころに沸き起こるようになった●きみに傷を●と直接言っていないところがよかったのだろうか●きみの日曜日に●というところが●Shall We Dance●恋人とこの映画を見に行く約束をして●その待ち合わせの時間に間に合いそうになくって●あわてて●バスに乗って●河原町に行ったのだけれど●あわてていたから●小銭入れを持って出るのを忘れて●で●財布には一万円札しかなかったので●運転手にそう言うと●「釣りないで」●ってすげなく言われて●ひえ〜●って思って固まっていたら●ほとんど同時に●前からはおじさんが●後ろからは背の高い若い美しい女性が●「これ使って」「これどうぞ」と言ってお金を渡そうとしてくださって●これまた●ひえ〜●って状態になったんだけど●おじさんのほうが●わずかにはやかったので●女性にはすいませんと言って断り●おじさんにもすいませんと言って●お金を受け取って●「住所を教えてください」●と言うと●「ええよ●ええよ●もらっといて」●と言われて●またまた●ひえ〜●となって●バスから降りたんやけど●そのあと●恋人と映画をいっしょに見てても●バスのなかでの出来事のほうがだんぜんインパクトが強くて●まあ●映画も面白かったけどね●映画よりずっと感動が大きくって●で●その感動が●長いあいだ●こころのなかにとどまっていて●ぼくも似たことを●そのあと●阪急の●梅田の駅で●高校生くらいの恋人たちにしてあげた●切符の自販機に同じ硬貨を入れても入れても下から返却されて困ってる男の子に「これ使えばええよ」と言って●百円玉を渡してあげたことがあって●たぶん●はじめてのデートだったんだろうね●あの男の子●女の子の前で赤面しながらずっと同じ百円硬貨を同じ自販機に入れてたから●あの子の持ってた百円玉●きっとちょこっとまがってたんだろうね●あの子たちも●どこかで●ぼくのしてあげたことを思い出してくれてたりするかなって●これ●まだどこにも書いてなかったと思うので●いま思い出したので●書いとくね●でも●あのときの恋人●いまどうしてるんやろか●あ●ぼくの恋人ね●いまの恋人と同じ名前のえいちゃん●エイジくん●おおむかしの話ね●あのときのエイジくんは●えいちゃんって呼んだら怒った●それは高校のときに付き合ってた彼女だけが呼んでもええ呼び方なんや●って言ってた●いま付き合っているえいちゃんは●えいじって呼び捨てにすると怒る●なんだかなあ●笑●初恋が一度しかできないのと同じように●ほんとうの恋も一度しかできないものなのかな●ほんとうの恋●真実の恋と思えるもの●その恋を経験した後では●どの恋も●その経験と比べてしまい●ほんとうの恋とは思えなくさせてしまうものなのだから●しかし●ほんとうの恋ではなかっても●愛がないわけではない●むしろ●ほんとうの恋では味わえないような細やかな愛情や慈しみや心配りができることもあるのではないか●スターキャッスルのファーストをかけながら●自転車に乗って郵便局に行ったんやけど●「うまく流れに乗れば土曜日に着きます」という●局員の言葉に●ああ●郵便物って●流れものなのか●と思って●帰りは●「どうせ●おいらは流れ者〜」とか●勝手に節回しつけて●首をふりふり帰ってきました●あ●ヘッドフォンはスターキャッスル流しっぱなしにしてね●で●これから●また自転車に乗って●五条堀川のブックオフに●ひゃ〜●どんなことがあっても●読書はやめられへん●本と出会いたいんや●まあ●ほんまは恋に出会いたいんやけどね●笑●いやいや〜●恋はもうええかな●泣●恋愛増量中●日増しに●あなたの恋愛が増量していませんか●翻訳するにせよ●しないにせよ●誤読はつねにある●ジョン・レノンの言葉●「すべての音楽はほかの何かから生まれてくるんだ」に●しばし目をとめる●目をとめて考える●あらゆるものがほかの何かから生まれてくる●うううん●なるほど●あらゆるものがほかの何かからできている●とすれば●まあ●たしかに●そんな気がするのだけれど●では●それそのものから生まれてくるものなどないのだろうか●それそのものからできているものなどないのだろうか●とも思った●もう一度●「すべての音楽はほかの何かから生まれてくるんだ」に●目をとめる●ブックオフで『新古今和歌集』を買った●あったら買おう●と●チェックしていた岩波文庫の一冊だった●で●手にとって開いたページにあって●目に飛び込んできた歌が●「言の葉のなかをなくなく尋ぬれば昔の人に逢ひ見つるかな」で●運命的なものを感じて●すかさず買う●笑●人間はひとりひとり●自分の好みの地獄に住んでいる●水風呂につかりながら読んでいる『武蔵野夫人』も●面白くなってきたところ●どうなるんやろねえ●漱石が知性の苦しみを描いたのに対して●大岡昇平は●知性の苦しみが美しいところを描いている●この違いは大きいと思う●小説は実人生とは異なるのだから●美しいものであるべきだと思う●真実が美しいのではないのだ●真実さが美しいのだ●ぼくは●苦しみを味わいたいんやない●苦しみを味わったような気になりたいんや●だから●漱石よりも大岡昇平のほうが好きなんや●麦茶の飲みすぎで●ちとおなかが冷えたかも●お腹が痛い●新しいスイカ割り●スイカが人間にあたって●人間がくだけちゃうっての●どうよ●うぷぷぷぷぷ●ああ●なぜ●わたしは●わたし自身に偽りつづけたのだろうか●そんなに愛をおそれていたのだろうか●愛だけが●人間に作用し●その人間を変える力があるからだろう●なぜなら●本物の愛には●本物の苦痛があるからだ●でも●贋物の愛にも本物の苦痛があるね●笑●なんでやろか●よい日本人は死んだ日本人だけだ●というのが●太平洋戦争のときの●アメリカ政府のアメリカ人に対する日本人というものの戦略的な知らしめ方●いわゆるスローガンのひとつだったのだけれど●詩人にとって●よい詩人も●案外●死んだ詩人だったりして●笑●彼は同時に二つの表情をしてみせた●ぼくのこころに二つの感情が生じた●そのひとつの感情を●ぼくは悲しみに分類し●悲しみとして思い出すことにした●自我を形成するものを遡ると●自我ではないものに至りつくのか●自転車に乗って●嵐山に行った●ジミーちゃんと●ジミーちゃんは●モンキー・パークに行くという●ぼくは猿がダメなので●というのも●大学の人類学の授業の演習で●嵐山の猿を観察していたときに●仔猿をちらっと見ただけで●その母親の猿に追いかけられたことがあるからなんだけど●で●それで●ぼくは●モンキー・パークの入り口の登り口近くの●桂川の貸しボートの船着場のそばの●石のベンチの上に坐って●目の前に松の木のある木陰で●ジミーちゃんを待っていました●川風がすずしく●カゲロウがカゲロウを追って飛んでいる姿や●鴨が鴨の後ろにくっつくようにして水面をすべっている様子を目で追ったり●ボートがいくつで●どんな人たちが何人くらい乗っているか●数えてみたりしていました●いや●多くの時間は●さざなみの美しさに見とれていましたから●ボートとそのボートに乗った人たちのことは●その合い間に観察していた●と書いたほうが正確でしょう●十二のボートが川の上に浮かんでいました●三人連れのボートが一つ●三人の子供を乗せた父親らしきひとの4人乗りが一つ●あとは●男女のカップルにまじって●男男のつれ同士が二つ●女女のつれ同士が一つでした●ぼくが一人で坐っていると●ゲイらしきカップルが●左となりに腰掛けて●自分たちの姿をパチパチ写真に撮りはじめました●背中に腕をまわして抱き合ったり●まあ若いから●まだ20歳くらいでしょう●二人とも●かわいらしくて美しいから許される光景でしたが●笑●と●思っていると●右となりにも●ゲイらしきマッチョ風の男同士のカップルがやってきて●ここは●どこじゃ●と●ぼくは不思議に思いましたが●まあ●そんなこともありかな●と思いました●有名な観光名所ですものね●右となりのカップルは●タイかフィリピンかカンボジアからって感じで●中国語とも韓国語とも違う言葉をしゃべっていたような●左となりのカップルは●たぶん韓国語だと思いますけど●ぼくは●川の風景と●川ではないものの風景を●たっぷり楽しんでいました●ジミーちゃんがくるまで●4●50分くらいでしょうか●左となりのカップルは●楽しげに●ずっといちゃいちゃしていました●時代ですね●川のうえを●川の流れとともに下っていくさざなみが●ほんとにきれいやった●また●さざなみの一部が●川岸にあたって●跳ね返ってくる波とぶつかってできる波も●ほんまにきれいやった●ぼくは●きょうの半分を●川に生かされたと思った●川と●川風ちゃん●ありがとう●美しかったよ●何もかも●画像を撮らなかったのが残念●行きの自転車では死にそうなくらいに暑かったですが●陰にはいりますと●川風がここちよかったです●同じくらいの時間に●タカトさんも行ってらっしゃってて●でも●南北と●違う川沿いの道だったようですね●お会いできずで●残念です●きらきらときらめく水面が美しかったです●ここ●1●2週間●悩むことしきり●自分の生き方もですが●生きている道について考えていました●父親が●ことし亡くなったのも関係があるのかもしれません●ジミーちゃんに●帰りに一言●言いました●ぼくって●だれかひとりでも●ひとを幸せにしてるやろか●って●そんなん知らんわ●とのお返事でした●うううううん●もしも●ぼくの存在が●ただひとりの人間のためにもなっていないのだとしたら●生きている価値なんかあるんやろか●って●川の美しさに見とれながら●そんなこと●考えていました●家族がいないということがきっかけでしょうか●自分の選んだ道ですが●自分の選んだ生き方ですが●自分の存在があまりに小さく思えて●こんなこと●考えるひとじゃなかったのですが●考えれば気がつくこと●考えなければ●いつまでも気がつかなかったであろうこと●ひとつひとつの息が●つぎの息につづくように●孤独を楽しむ●といっても●もう自分が孤独でないことを●ぼくは知っている●何かについて考えたり●思い出したりすると●その何かが●ぼくに話しかけたり●考えさせたりしてくれるからだ●ぼくが出来事に注意を払うと●出来事のほうでも●ぼくに注意を払ってくれるのだ●だから●赤ちゃんや●幼児が●愛に包まれているように見えるのだ●ときどき●ぼくは●ぼくになる●ときどき●詩人が●詩人になるように●で●詩人がぼくになったり●ぼくが詩人になったり●これまで●ぼくは●たくさんのことに触れてきたけど●そのとき同時に●たくさんのことも●ぼくに触れていたのだ●と●そんなことを●きょう●電車のなかで読んでいた●シルヴァーバーグの『Son of Man』●の●He touches everything and is touched by everything.●というセンテンスが●ぼくに教えてくれた●ほんとうのぼくが●ここからはじまる●帰りの通勤電車のなかで●ふとメモを取った言葉だった●ところで●禅●って●詩の骨●みたいなものかしらね●矛盾律の解体●と●言ってもいいのかも●解体●じゃなく●再構築かな●彼のぬくもりが●まだそのベンチの上に残っているかもしれない●彼がそこに坐っていたのは●もう何年も前のことだったのだけれど●あるものを愛するとき●それが人であっても●物であってもいいのだけれど●いったい●わたしのなかの●何が●どの部分が●愛するというのだろうか●どんな言葉が●いったい●いつ●どのようなものをもたらすのか●そんなことは●だれにもわからない●わかりはしない●人生を味わうのが●人生の意味だとしたら●いま●どれぐらいわかったところにいるんだろう●ふと水鳥が姿を現わす●なんと生き生きとした苦痛だろうか●その苦痛は●ぼくの胸をかきむしる●ああ●なんと生き生きとした苦痛だろうか●苦痛という言葉が●水鳥の姿をとって●ぼくの目の前に姿を現わしたのだ●ぼくは●夜の賀茂川の河川敷で●月の光にきらめく水のうねりを眺めていたのだった●ぼくは●前世に水鳥だったのだ●巣のほうを振り返ると●雛が鷹に襲われ●自分もまた襲われて殺されたのだった●水は身をよじらせて●ぼくの苦痛を味わった●水鳥の姿をした●ぼくの前世の苦痛を味わった●それを眺めながら●ぼくも身をよじらせて苦痛を味わった●大学のときに●サークルの先輩に●「おまえ●なんでいつも笑っているの?」●って言われて●それから●笑えなくなった●それまで●ひとの顔を見たら●ついうれしくて●にこにこ笑っていたのだけれど●ささいなことで●人間って傷つくのね●まあ●ささいなことだから●とげになるんだろうけど●ミツバチは●最初に集めた花の蜜ばかり集めるらしい●異なる種類の花から蜜を集めることはしないという●そのような愛に●だれが耐えることができようか●ひとかけらの欺瞞もなしに●ぼくは彼を楽しんだ●彼が憐れむべき人間だったからだ●彼もまた●ぼくを楽しんだ●ぼくもまた憐れむべき人間だったからだ●こんなに醜い●こんなに愚かな行為から●こんなに惨めな気持ちから●わたしは●愛がどんなに尊いものであるのか●どれほど得がたいものであるのかを知るのであった●なぜ●わたしは●もっとも遠いものから●もっとも離れたところからしか近づくことができないのであろうか●鯨が●コーヒーカップのなかに浮かんでいる●ベートーベンよりバッハの方がすてきね●音楽がやむと●鯨は●潮を吹いて●からになったコーヒーカップのなかから出てきて●葉巻に火をつけた●光は闇と交わりを持たない●光は光とのみ交わりを持つ●われわれが言語を解放することは●言語がわれわれを解放することに等しい●高村光太郎の詩を読む●目で見ること●目だけで見ること●ついつい●わたしたちは●こころで見てしまう●目だけではっきり見ることは不可能なのだろうか●言葉で考える●というより●言葉を考える●というより●言葉が考える●まったくわたしがいないところで●言葉が考えるということは●不可能だと思うが●言葉が●わたしのことをほっぽっておいて●ひとりでに他の言葉と結びつくということはあるだろう●もちろん●結びつくことが●即●考えることではないのだが●言葉がわたしを置いていく●わたしのいない風景がどこにもないように●そこらじゅうに●わたしを置いていく●わたしの知らないあいだに●あらゆる風景が●わたしに汚れていく●いつの間にか●どの顔のうえにも●どの風景のなかにも●わたしがいるのだ●ひとりでに●みんなになる●あらゆるものが●わたしになる●掲示板●イタコです●週に二度●ジムに通ってからだを鍛えています●特技は容易に憑依状態になれることです●一度に三人まで憑依することができます●こんなわたしでも●よかったら●ぜひメールください●イタコです●年齢は微妙な26才です●笑●でも週に二度事務に通っています●いやああああああああああん●ジムに通っています●でも●片手でピーナッツの殻はむけません●むけません●むけません●むけません●たった一度の愛に人生がひきずりまわされる●それは●とてもむごくて●うつくしい●サラダ・バーでゲロゲロ●彼の言葉は●あまりにこころのこもったものだったので●ぼくには●最初●理解することができなかった●うんちも●うんちをするのかしらん●吉田くんは●手足がバラバラになる●だから●相手をやっつけるときは●右手に右足を持って●左手に左足を持って●相手をポカスカポカスカなぐるのだが●あんまりすばやくなぐって●もとに戻すので●相手もなぐられたことに●気がつかないほどだ●裸の女が●エレベーターのなかで●胸元を揺らすと●エレベーターが●ボイン●ボインってゆれる●裸の老婆が●しなびた乳房の先をつまんで●ふにゅーって伸ばすと●エレベーターが急上昇!●ビルの屋上から飛び出て●大気圏の外まで出ちゃった●摩天楼の上で●キングコングが美女を手から離して●地面に落とす●飛んでっちゃったエレベーターをつかもうとしたんだな●キキキ●きっとね●事実でないことが●記憶としてある●偽の記憶●と●ぼくは呼んでいるが●なぜそんな記憶があるのだろう●親の話によると●幼いころのぼくは●テレビで見たり●本で読んだりしたことを●みんなほんとうのことだと思っていたらしい●また●嫌なことが贋の記憶をつくるということもあるかもしれない●たとえば●ぼくは●おつかいが嫌いだったので●商店街に行く途中で通る橋のたもとにある大きな岩の表面を●いつもびっしりとフナムシのような昆虫が覆っていたという記憶があるんだけど●これなんかはありえない話で●おそらくは無意識がつくりあげた幻想なのであろう●まるで悪夢のようにね●比喩が●人間の苦痛のように生き生きしている●苦痛は●いつも生き生きしている●それが苦痛の特性のひとつだ●深淵が深い●震源が深い●箴言が深い●信念が深い●ジェルソミーナ●だれも知らないから●捨てられるワタシ●ノウ・プロブレムよ●このあいだ合コンに行ったら●相手はみんなイタコだった●みんな●死んだ友だちや死んだ歌手や死んだ連中を呼び出してもらって●大騒ぎだった●ぼくにもできるにゃ●ひさんなバジリコ・スパゲティ●I●II●III●IV●と●ローマ数字を耳元でささやいてあげる●芸術にもっとも必要なのは勇気である●と言ったのは●だれだったか忘れたけれど●恋人たち●気まぐれな仮面●奇妙な関係●貝殻の上のヴィーナス●リバー・ワールド・シリーズ●と●つぎつぎに●フィリップ・ホセ・ファーマーの小説を読んでいると●そんな気になった●ぼくも●テキスト・コラージュをはじめてつくったときには●それが受け入れてもらえるかどうか●賭けたのだけれど●現代詩はかなり実験的なことも可能な世界であることがわかった●ぼくは自分が驚くのも好きだけど●ひとを驚かせるのはもっと好きなので●これからも実験的な作品を書いていきたいと思っている●何もしていないのに●上の前歯が欠けた●相方没収!●突然●自由なんだよって言われたってねえ●きょう●ニュースで●息子の嫁の首を鉈でたたいて●殺そうとした姑がいたという●80歳のババアだ●ジミーちゃんにその話をしたら●「その切りつける瞬間●その姑さんが念じた言葉●わかる?」●と訊いてきたので●「殺してやる?」と答えたら●そうじゃなくて●「ナタデココ」●と言って●自分の首を指差した●やっぱり●ぼくの友だちね●微妙にこわいわ●友だちだけどね●友だちだからね●笑●母親に抱えられた赤ん坊が通り過ぎていく●人には●無条件で愛する対象が必要なのかもしれない●自己チュウ●と違って●自己治癒●脱穀の北朝鮮●朝鮮民主主義人民共和国の令嬢夫人たちが●踊りに踊る●一糸乱さず整然と●脱穀の北朝鮮●朝鮮民主主義人民共和国の令嬢夫人たちが●踊りに踊る●一糸乱さず整然と●黄色いスカートが●ひらひらと●ひらひらと●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●街じゅういたるところから●猿のおもちゃたちが●姿を現わす●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●街じゅういたるところから●猿のおもちゃたちが●姿を現わす●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●シンバルを打ち鳴らしながら●猿のおもちゃたちが●ぼくのほうに向かってやってくる●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●シンバルを打ち鳴らしながら●猿のおもちゃたちが●ぼくのほうに向かってやってくる●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●脱穀の北朝鮮●朝鮮民主主義人民共和国の令嬢夫人たちが●足をあげて●足をさげて●オイ●チニ●オイ●チニ●黄色いスカートをひるがえし●オイ●チニ●オイ●チニ●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●猿のおもちゃたちが●シンバルを打ち鳴らす●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●脱穀の北朝鮮●朝鮮民主主義人民共和国の令嬢夫人たちの黄色いスカートがまくれあがり●マリリン・モンローのスカートもまくれあがり●世界じゅうの婦女子たちのスカートもまくれあがる●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●自転車は倒れ●バイクも倒れ●立て看板も倒れ●歩行者たちも倒れ●工事現場の建設作業員たちも倒れ●ぼくも道の上にへたり込む●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●オスカル・マツェラートの悲鳴がとどろくように●街じゅういたるところ●窓ガラスは割れ●扉ははずれ●植木鉢は毀れ●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●建物はブルブルふるえ●道もブルブルとふるえ●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●何台もの自動車が歩道に乗り上げ●つぎつぎとひとたちを跳ね●何台もの自動車がビリヤードの球のようにつぎつぎと衝突し●特急電車や急行電車や普通電車がつぎつぎと脱線する●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●ビルの壁に取り付けられた看板はビルの壁ごと剥がれ落ち●ヘリコプターはキリキリ舞いしながら墜落し●飛行機は太陽の季節のようにビルを突き抜けて爆発炎上し●コンクリートの破片が●ガラスの破片が●血まみれの手足が●空からつぎつぎと落っこちてくる●空からつぎつぎと落っこちてくる●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●大気はビリビリに引き裂かれ●白い雲は粉々に吹き散らされ●大嵐の後の爪痕のように●街じゅういたるところの景色がバリバリと引き剥がされていく●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●ぼくの顔から目が飛び出し●歯茎から歯が抜け●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●身体じゅうの骨がはずれ●世界のたががはずれ●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●脳髄から雑念が払われ●想念から悲観が欠け落ち●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●時間は場所と出来事からはずれ●場所は出来事と時間からはずれ●出来事は時間と場所からはずれ●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●時間は場所と出来事からはぐれ●場所は出来事と時間からはぐれ●出来事は時間と場所からはぐれ●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●すこぶる●ひたぶる●すこすこ●ひたひた●爽快な気分になっていく●爽快な気分になっていく●パシャン!●パシャン!●パシャン!●パシャン!●吹けよ●風!●呼べよ●嵐!●沸騰する二酸化炭素●カーボン・ダイオクサイド●まっすぐな肩よ●来い!●沸騰する二酸化炭素●カーボン・ダイオクサイド●真っ直ぐな肩よ●来い!
最新情報
選出作品
作品 - 20101202_460_4870p
- [佳] Jumpin' Jack Flash。 - 田中宏輔 (2010-12)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
Jumpin' Jack Flash。
田中宏輔