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作品 - 20100802_423_4591p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


喪失入道雲

  百日紅

当面することが無い俺達は
頭の包帯を新しいものに替え
木陰で隠れるベンチを探しながら
公園の中を首輪の無い犬の様に練り歩く

親父が一切の記憶を失った事と
俺がいざこざから職を失った事は
互いに関係が無いとは言え
どちらも真夏に起こった話だ

歩きながら俺は親父にせがまれて
したくもない昔話を語って聞かせる

せっかちな性分のせいか
包まれている熱気のせいか
俺達はだんだんと早足になっていく

親父は盛んに頷きながら俺の話を聞いてはいるが
大部分が嘘だって事に薄々気付き始めている

俺達は互いにラーメン臭い息を吐きながら
そう在りたかった幻の昔話を繰り返す

とんぼがホロホロと交尾しながら
縄張りを巡って消えていく

暑い季節が御似合いな俺達は
今日もベンチの横を足早に通り過ぎる

文学極道

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