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作品 - 20100630_574_4502p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


relation

  はなび

par hasard


あなたは 多分
何処かで本を読んでいて
眠れない女の子のためのお話を
書いている途中

そして
ほんの少し休憩したところで
ほんの少しお腹も空いたころ

電話をかけると
疲れたようなかすれ声の
femme de menage は母親の手つきで
soupe de poisson ばかり拵えている

このところ

あなたは電話を切って
また別の電話をかける
話を聞くのが上手なあの子に

小さなテーブルの薄暗いお店
炭化した木製のイスに座って
彼女が細い長い階段を下って来るのを
ほら また本を読みながら待っていて
眠れない女の子のためのお話に出てくる
眠ったままの眠れない女の子の名前を考えてる

あなたはそんな態度を拵える このところ
酔っぱらいみたいにグラグラ煮立った
頭を 支えるのもやっとだって
人差し指をこめかみに当てる

ねえ こっちをむいたらいいのに
ちょっとした清潔な食べ物をを口に運ぶ素振りで
口移しで眠り薬をばら撒いて ほら

あなたは多分
何処かで 本
を読んでいて 眠れない女の子のためのお話を 書いて
いる 途中だったわ

お腹を空かせた 酔っぱらいのお膝の上に
からっぽのお腹から 這い出して来た女の子が
くるぶしをブラブラさせて 待ちくたびれてる
彼女がテーブルにつくと あなたが読んできた本の様に 
たくさんのページを繰り出すわよ そして
眠らない男の子の眠ったままの冒険が始まる

泣いている様な 笑っている様な おかしな表情で
ほら 今もあなたは多分何処かで本を読んでいて それは
懐かしい とても懐かしい 記憶を手繰る 沢山のお話
あなたは揺りかごで眠っていて遠くの音を聞いている様に

遠くの音は偶然のかさなりあいのようにかさなりなりあって
沈黙のようなフォルムをかたちづくってゆく
眠れない女の子のための眠らない男の子がお話を始めるとやがて
眠れない女の子は眠りに落ちてゆくそれは
あたらしいせかいのはじまり

文学極道

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