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作品 - 20100503_432_4368p

  • [佳]  自警 - パン・おべんとう  (2010-05)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


自警

  パン・おべんとう

始まりも終わりも予感できないし
落ちる花びらは、拾わなかったことのほうが多い
私は開業する
この森に少し入る
沈みゆく船は誰のせいなのかを見つけに
なぜだろうか
真夏に焼かれたプラットホームが、ひどくまぶしいのは
縁台にあがった猫が、たったいま居た場所を振り返るのは

朽ちた倒木のうえで、羽虫の群れが影を刻み
戻せない時間の行方を追っていた
かつて海流だったものは、もはや瀕死でむしろ食べ頃
みずみずしい体温を、いま
手放さなければならないという悲劇が
光を放つ
ふっと飛び立つような気配で
ああ飛べないのだという驚きを、全身で放っている

玄関にくたびれていた、父親の靴
革靴のしわ
目をつむって、もう繰り返さないから、と誓った
無口だった自分がずっと悲しかった
涙だけが、騒がしく
沈黙という名の信仰を、まぶたが破れるほど守っていた

今朝、飲み口の欠けた器で
くちびるが切れたことを、不意に思い出して笑う
今日はやけに重たい服を着ている
まるでゼロで割るふうに、そんなことを考えてみる
飛び立つような気配
目の前に横たわる職務
咳をこらえる
森が一斉に歌いだす前の、
たったひとつの静けさのために

文学極道

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