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作品 - 20100322_685_4267p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


酔いどれ点字

  debaser



紀文のかまぼこが海を泳いでいる
それは、気分のかまぼこかもしれないし
ぼくたちの気分はいつも気まぐれだ
気がつくと、気まぐれは気まぐろになって
モナコは海鼠になって
電気いるかの群れが
海に点字を作って
ぼくたちはいないよと言っている
そんで、
ユーモアはHumorと綴るけれども
でも、ユーモアがもしかしてYou More!だったら
もっとうまく生きれそうな気がする
いや、しないか
いや、するか
いや、いるか
いや、いないか

い る か い な い か


ぼくが所属している部門が
他の会社に売られようとしている
アウトソースってやつだ
つまり、ビジネスというのは
いつも打者のアウトコースに狙いを定めて
単純作業をいかに安い労働力に置き換えるかが大切で
それは、かの有名なマルクス兄弟がずいぶんと昔に
執筆した書物の中にさえしっかりと記されている
さくしゅというのは裂く主で
ぼくたちは、いつだって主に裂かれる存在にすぎない
それでいて、ぼくたちは今
人事部のボスと交渉している
それが性交渉なら、できれば気持ちよくフィニッシュしたいけれども
中国人の彼女は、
ぼくたちがアウトソースされた場合に
退職金に上乗せされるパッケージを提示するのが仕事だ
彼女は、中国語訛りの英語で
まんざら悪くない数字でしょ、と言う
世の中には、
まんざら悪くないことがあふれているという意味で
ただその意味においてのみまんざら悪くない
仕事帰りに立ち寄った上野のおっぱぶで
舐めまわしたオッパイも
まんざら悪くなかった
まんざら悪くないオッパイだった
それがもしもまんざらまるくないオッパイだったら
今頃、ぼくの舌のさきっちょは血だらけかもしんないな
だけども残念な知らせがキター
今日は、No Oppai Dayだ
気にするな
人生っていつだってそんなもんだろ


2005年の真夏の話をしよう
2005年の真夏にぼくは妻と娘を連れてフジロックに行った
だけれども、それはぼくの姓がフジタであることとは
もちろん関係ない
フジタたちは、グリーンステージの前で寝そべって音楽行事を楽しんでた
さて、つぎは、いよいよイマーノが出てくるぞというときに
いきなり雨が降ってきて
娘がまだちっこかったので
後ろ髪をひかれるおもいでフジタたちは
雨宿りの出来る離れた場所に移動した
あいにく雨は長い間降り止まず
イマーノが終わっちゃうよと思っていると
ぴたっと雨が止みやがった
よし、走ろう!なんて声をかけてフジタたちは走った
そんだらよ、
ステージの方向から、「雨上がりの夜空に」のイントロが聴こえてきた
なんか、もうおれ泣いたわ
こんな夜にオマエに乗れてよかった
そんで、彼女はくいん
ずっと夢みさせてくれてありがとう
2005年の海が真冬になったら
真っ先に真っ裸になりたいわ


ぼくはときたまミヤザワケンジとフクザワユキチを混同する
二人ともが七文字だからなのか
なんなのかはわからない
てんはひとのうえにひとはつくらずひとのしたにはひとをつくらず
ってミヤザワかフクザワか、
どっちだっけ
その場合のてんは点で
ぼくはそれを同僚のインド人に教えようとする
だけど、うまく英語でいえなくて
All human beings should be always evenと言う
これが正しい英語かどうかは知らないけれども
まんざら悪くない英作文であって欲しい
だけども、インド人は目を点にして
Hmmと相槌を打つ
ところでHumanとHumorというのは
語源的に関係があるんだろうか
さらに、ぼくは五限の授業が大嫌いだったし
ぼくだってまんざら悪くないだじゃれを考えるのに必死だったりする
いつも午後になると
どういうわけか
ユーモアが決定的に足りなくなる


海にはまんざら悪くない数字があふれている
カモン、カモンと鴎(かもめ)が飛び交っている
ぼくは誰よりも速い青色になりたい
それが早まって青虫になるんなら
まぎれなく
ぼくはグレゴールザムザになって
妹はグレーテになって
二人で愚連隊になる
変色蜥蜴が
変色するにはそれなりの理由があった
だとすれば、ぼくが青色になるという荒唐無稽な妄想にだって
きっと正当な理由があったっていい
ぼくたちは、いつだって
RightとLeftの間を永遠にさまようように
RとLの発音を間違っている
まんざら悪くない数字を与えられたぼくたちは
スージーの記憶が確かなら
もう居場所なんてどこにもなかった
残念ながらユートピアはHutopiaじゃなかったし
考えるに、そこにはHumorもHuman Beingもない
ねえ、スージー
スージーは、どんな世界に暮らしたい?
スージー、ぼくは、スージーがいる世界で暮らしたいよ
スージー、ぼくは、きみがいればどんな場所でも暮らしていける
愛にはそれなりのはけ口が必要だという
今人気のアヒル口が両端から裂けて
ぼくたちをまるごと飲み込んだとしても
やっぱり愛が必要であることに変わりはない
だけれども
必ず最後に愛は勝つかどうかは
まだわからなくて
そんなふうに歌ったりすることもあるけれども
ぼくは、フジテレビのこともTBSのことも
まるきり信じちゃいない
だってやつらは、
スージー、数字のことにしか興味がないんだぜ


ぼくが先日舐めまわしたオッパイの詳細について
白々しく語るのは
次回のお楽しみにしておこう
なぜなら、ぼくは、今まさにここで書いている詩が
ぼくにとっての最後の詩になればいいのにといつも思っているし
詩について語りたいことなんてひとつもありはしない
何年か前に、ぼくは「ポエムとyumica」という
しょーもない糞ポエムを書いた
読み返すと
そこにはユーモアのかけらもないし
ましてや、ブンガクゴク島は
ユートピアでもなんでもない
もうすぐ年間各賞が発表されるという
それがどうしようもない一般の投稿者たちにとって等しく
まんざら悪くない結果であることを祈っている
ぼくは、いったいこのまんざら悪くないというやつを
何回繰り返せば気が済むのだろう
小学生の時に
土曜日には五限がなく午前の授業が終わると
今日は五限は有りませんと言って先生は
黒板消しで黒板を消したあとに
先生消しで先生を消した
家に帰ると、昼ごはんが用意されていて
それは、十中八九、インスタント方式のラーメンだった
ぼくは、それを兄と分け合ってすすりながら
吉本新喜劇を観るのが習慣だった
そうやって
ぼくたちは大人の階段をのぼろうとした
運悪く大人の会談に
巻き込まれたりすることもあったけれども
大人の階段を上手くのぼれているんだろうか
なんてことは考えなかった
つまり、ぼくたちは、いつまでも
大人の階段をのぼろうとしている
子供に過ぎないんだよ


ヘイボス、わかっただろ、ぼくはまだ子供なんだ
だから、ボスがぼくたちを人質にしているのは
つじつまがあっている
You are right、Hu are lightだ
あなたはいつもこの世界の光そのものだ
だから、臆することなく
ぼくの首を掻っ切って欲しい
申し訳ないけど、二つに掻っ切られた首んとこから
ぼくは申し訳ない程度に血を噴出すことになるだろう
30歳を過ぎたあたりから
低血圧になやまされて
朝目覚めると、一番に死にたいと思う
そんで、シャワーを浴びて
歯を磨いて、髪をセットして
服に着替えて
ぼくの妻がつくってくれた弁当をかばんに入れた頃に
やっとぼくは生きていることに気がつく
そんで、バスにのって
小田急線の向ヶ丘遊園駅について
あほほど混んでいる電車の中で
もう一回、死にたいと思う
かばんの中のサンドイッチもぼくも
サンドイッチになった
電車に轢かれたいと思う
だけれども、なにもなかったように千代田線の大手町駅についてしまい
オフィスに行く前に、コンビニに寄って
水を買う
エレベーターに乗って
9Fで降りて
入り口でぼくたちの冴えない顔がプリントされた社員証をセンサーにかざすと
扉がういんって開く
そんで、自分のデスクにたどりつく
パソコンのロックモードを解除するために
パスワードを入力する
昨日のパスワードと同じやつを入力する
もしも同じじゃなかったら
どこにもはいれない
さいわい、ぼくたちがログインに成功すると
パソコンはにぎやかな音楽をかなで
アイコンが順々に出揃ったあたりで
ぼくたちはメールを立ち上げる
すると頼んでもいないのに
新規メールを受信して
その受信数が100を超えた時には
やっぱり死にたいと思う
そんな気持ちも知らずに、どこからか電話がなって
出てみると、昨日メール送ったけど読んだ?とか言われたりして
ぼくは、はははとっても愉快なメールだったね
と嘘をついたあとに、死にたいと思う
今日は10時から人事部のボスと面接だ
彼女は、きっとぼくたちに
まんざら悪くない条件を提示するだろう
5分前にぼくは
12Fの会議室に出向いて
彼女を待つ
彼女は、
5分遅れてやってきて
席に着くやいなやぼくに一枚の紙を渡す
そこには、ぼくがこの会社にいつまで残ることが出来るのかを示す数字と
退職金を示す数字が仲良くならんでいる
そして、彼女はこう言うんだ
まんざら悪くない数字たちでしょ、と
ぼくは、こういう光景ならさんざん夢で見た気がするよと思いながら
ミセス・スージー、ぼくは、この数字をだまって受けいれるよ
だけどスージー、そのかわりに、ひとつだけぼくの頼みをきいて欲しいんだ
それはきっとあなたにとってもまんざら悪くない話のはずだ
スージーは、そうねえ、あなたたちの言い分だってあるはずよね、と
まるで母親のような顔でぼくを覗き込む、
OK、スージー、ぼくの最後の願いはこうだ
スージー、こんな場所でなんだけど
あんたのオッパイをぞんぶんに舐めまわさせてくれないか
だってぼくとあんたは
いつだってイーブンな関係のはずだろ
そして、ぼくが舐めまわしたあとに
まんざら悪くないおっぱいでしょ、と言ってくれ


  スージーの目は、点になる
  スージーの目は、・になって、人の上に人を作ろうとする
  スージーの・は、目になって、・の下に目を作ろうとする
  スージーは点になって、・の上に点を作ろうとする
  点はスージーになって、人の上に・を作ろうとする
  やっぱりスージーは人になって、上野のおっぱぶでオッパイを舐められる


三月二十一日、日曜日に
電気いるかの肉をフライパンで焼いて食べる
それは電気の味がして
いるかの味がしない
電気の味に慣れない子供たちの舌は
ビリビリしびれ
そのせいで家族は発熱した
だけれども、ぼくは、愛を覚えている
夕食を終え、ぼくは子供たちとお風呂に入った
子供たちは、空っぽの卵パックのへこんだとこに
ペットボトルのキャップを入れて
たこ焼きを作る真似をする
ぼくがよくやるように
子供たちは
たこ焼きをひっくり返す
全体が浸かった浴室に一匹の
いるかが
迷い込んだので
全員で背中に乗って
ぼくたちの目と目は点々になって字を作る

い る か い な い よ


紀文のかまぼこが海を泳いでいる
かまぼこは、かまととで
かまぼこだってかまととだってあまえんぼうだって
みんなみんな生きている
友達の友達はみなタモたちだった
ぼくは、なんでタモさんがミュージックステーションの司会を
あんなにも長く続けているのかがわからない
きくところによると、タモさんの友達の井上陽水が
5年くらいに1回、番組に出たときに
タモさんは絶対そこにいたいと思っているから
氷の世界にひろげよう友達の輪だから
だって友達ってそんなんだろ
本当かうそかなんか
窓の外では
リンゴ売りが
リンゴを撃っている
毎日が毎日の中にふぶいている
半分に割れたばっかりなのに
それはまた半分に割れようとする

文学極道

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