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作品 - 20100126_119_4115p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


折檻夫妻

  ゼッケン

アンパンマン撮影会でバイトのぼくは
アンパンマンの着ぐるみのまま
あんたがたに拉致された

タバコくさい!この人、アンパンマンのくせにタバコくさい!
ぼくの右隣に立ってピースサインを出していた女のほうが騒ぎ出したとき、
ぼくの左隣に立っていた男の右腕はすぐさまぼくの首に回された
おまえはアンパンマンに謝れ
ぼくの首に食い込んだ男の腕に力が込められ
ぼくは失神した

アンパンマンのかぶりものの中で目を覚ましたとき
ぼくは首から下を裸にされていることを知った
立ったままコンクリートの壁にはりつけにされているらしい
背中と尻が冷たく、固かった
きつく引っ張られた手首を動かすとじゃらりと鎖が鳴った
やめてください
ぼくは言った
足の裏が濡れる感触があった
床に水を撒いたようだった
やめ、めめめめめ
あんたがたは中途で切断して銅線をむき出しにした電気コードを
あんたがたはアンパンマンの裸踊りを
あんたがたの鋭く煌く歓喜が
ぼくはもういちど失神するまでをとても長く感じていた

しー。助けに来たよ、アンパンマン
と、ジャムおじさんは言った
さあ、すぐに新しいアンパンと取り替えよう
ジャムおじさんはビニールの袋を破ってヤマザキの小倉あんぱんを取り出す
自分で焼いている暇がなかったんでね
ジャムおじさんは片目をつぶってみせる
べりべりべり
アンパンマンの傷んだ頭部は取り外され
ジャムおじさんは買ってきたばかりの小倉あんぱんを
血を噴き出すぼくの左右の肩の間に
ぽん、と乗せた
小倉あんぱんを乗せたぼくの首から下の全裸の身体は
鎖を引きちぎり、口がないのでくぐもった唸り声を上げながら地下室から飛び出していった
床に転がったアンパンマンの頭の中のぼくの頭は思った
取り替えられた古いアンパンマンの頭はいつもどうなるんだろうとぼくはいつも思っていたものだ
ジャムおじさんに抱えられ、リビングに上がると
パジャマ姿のサタンが振り下ろした日本刀を小倉あんぱんマンが真剣白刃取りで掴んでいた
ソファの背もたれに登って奇声を発しつつ鎖鎌を振り回している女夢魔を横目で見ながら
ぼくの頭は館を出る
疲れたろう? さ、帰ろうよ
ぼくの頭は丸い丸いアンパンマンの頭の中にかくまわれている
ジャムおじさんの丸い手が
丸い丸いアンパンマンの頭を丸く撫でてくれる
ぼくの頭はもうタバコを吸わないだろう
気球はふわりと浮いて
静かな星座に針路を取る

文学極道

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