1、ウィリアムとジムへ
先週、わたしたちは風邪をひいてトイレから一歩も出られなかった。わたしたちとは、わたしの心とわたしの体とわたしのこと。わたしの心は美術館に行っていた。そこには誰も見たことがない絵ばかりが飾ってある。なぜならその絵たちは芸術性の欠片もなければ、技術的にも見るべきところはなく、人気すらもなかった。わたしの心はその絵たちの中のひとつの前にずっと立っていた。『中性子』という題の絵だった。それは指揮者のいないオーケストラであり、ジャワのガムランであり、それはどこにも動かすことが出来ず、なににも変換不可能なものだった。わたしの心とは違い。
わたしの体とわたしがどこに行ったのか語るのは難しい。わたしたちはそれについて語るつもりがないのだから。
2、語ることはなく、書かれることもないものへ
美しくもなく、優しくもなく、儚くもない女の子が死んだとき、わたしたちは泣かなかった。わたしたちには泣くべき理由がなかった。涙の代わりに言葉が流れた。それはここでは書けない言葉。
3、変換
わたしたちはわたしたちを変換させる。わたしたちはわたしたちの顔を整形し、体を長く細くする。わたしたちはわたしたちの論理を明瞭化し、思考を形式化する。わたしたちはわたしたちの性格を穏やかにし、生活を統一する。わたしたちはわたしたちのことをロボットと呼ぶことになる。
4、想像
わたしたちが書くのはここまでだ。ここから先はわたしたちにとって、機械となったわたしたちにとって良くないことが起こるからだ。途中まではうまく行っていた。みんながわたしたちに憧れ、みんながわたしたちのようにロボットへと変換していった。世界全体ががロボットへと変換していった。なのに、ある種のものはロボットへの変換を拒絶した。彼らのことを話すつもりはない。彼らはわたしたちとは違うし、わたしたちは彼らとは違う。わたしたちは彼らを憎む。それ以上のことを言うつもりはない。
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選出作品
作品 - 20100120_991_4096p
- [佳] リミット・オブ・コントロール - ぱぱぱ・ららら (2010-01)
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リミット・オブ・コントロール
ぱぱぱ・ららら