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作品 - 20091128_771_3980p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


子供の病院

  ヒダ・リテ


「自分のことが突然信じられなくなるっていうのは、疲れた大人には、よく見られる症状ですよ。」と言って子供の医者は僕に薬代わりのあめ玉をくれる。「少し安静にして青い空を眺めていれば、すぐに良くなりますよ。」丸椅子に腰掛けた小さな足をぷらんぷらんさせながら、子供の医者はうれしそうに僕を見る。

 子供の看護婦さんたちは床に落書きしたわっかをけんけんぱしたり、塗り絵を塗ったりして遊んでいる。だぶだぶの白衣を着た子供の医者のカルテには怪獣の絵が描いてあったり、なんだかよく分からない謎の暗号が描かれてあったりする。廊下にはおなかを出して昼寝してる子供の院長先生もいる。

「次の方どうぞ。」
 診察室を出て行く僕と入れ違いでやってくる次の大人もまた僕のように疲れた顔をしている。
「どうしましたか?」
「最近、悲しいときに涙が出ないんです。」
「それはいけませんね、早速手術です。」
 そう言って子供の医者と看護婦は水色のサインペンで患者の目の下にいくつもの涙を描いていく。

 たくさんご飯を食べて、最低三日間は犬と遊んでください。一生懸命、泥団子を握りなさい。公園の滑り台を修理してください。力尽きるまで昆虫を追いかけてみましょう。ずる休みして動物園に行きなさい。新しい恐竜の絵を描いて過ごしてください。家族に内緒で秘密基地を作りなさい。ロボットを発明してください。

 子供の医者がくれるアドバイスはいつもそんな感じだったけれど、漠然とした悩みを抱えてやってくる大人たちの心はいつも子供の病院で癒される。それはきっとこの世には子供たちにしか癒すことのできないものがあるからなのだろう。

文学極道

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