斜めに傾いだ枯れ木の下でよく逢引をした…
だがその幹の中心から
黄色い樹液が這いのぼるのを見ると
十秒の間
悦びを数える私たちの元に
砂だらけの鮒をよせた
意匠でなくむしろ赤さを欲しがったが
見わたせば池はまばらに凪いで
襲われないか
つまりそれは備えといえた
話すこともした
倉庫の窓に
木目にも似た粘土がつく日は
昼間は図鑑に読みふけった
私たちは一般に足音をかさね声をつづけて
捕獲の文字を
きつい夢のガラスにおき
茶色く焦げる噴水の曲りでも再会した
あたりには堀を隔てて幼稚園があり
倉庫が見えた
私たちはずいぶん確かな抱擁をたのしんで
水槽の鮒を握りしめ
鮒をまく進行のことを愛慕した
分厚い意匠を
替えたくおもい
枯れ木の下で舌をあわせた
斜めに傾いだ枯れ木の下でおびただしい数で冬鳥が鳴いている
おとうとよ…
最新情報
選出作品
作品 - 20091109_269_3932p
- [佳] 鮒 - がれき (2009-11)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
鮒
がれき