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作品 - 20091105_023_3918p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


夏に濁る

  DNA


溢れるほどの地中海との交接など捨てた 
あまりに 上手に自然発火する女 (忘れてはいない 
熱烈な傍観者が月の陰を揺さぶる 
左奥のタイヤは始終パンクし 擦り切れすぎ
て 抵抗への文句が浮かぶこともない 

制服に身をつつんだおまえ 
野火の隣で 乱舞し すずやかな真昼に 
身構えたときにはもう 空は捩じ切れ 

「青い森すら恨めしい」 

切っ先の変化に気付くこともなく まっさら
な受動性が 食を絶つことで全て 贖われる
と思っていた  石橋は叩くまでもなく崩れ落
ちていったといえばよいのか 

鈍い音とともに未生の田畠が燃やされ 
使い古された身体 については何も知らない 
テレビから漏れてくる早朝の 白い光がただ
ケタルいということは知っている そこ から
疾走するおまえの 見事に転倒する姿を 
裸眼に貼付けておきたい

(太陽を目指すことも 太陽に歯向かうことも同程度に
腐食していたから 白い 画布をひたすら 
×印で埋めていった一昨日 
削られた 頬骨から
誤って 零れ落ち渇いた 
肉と水晶が寒い 
さきに出発した船舶は 砂地で滞 留し 
隣で眠る男の 
くるぶしが薄暗い 

「夜にだけだらしなく咲く花の罪科を問う」 

ほつれた海流は脈を打って 風下の祭囃子をひとつずつ 
否定していき 膿んだ黒い血を垂らしながら 
潔白の証明にと 早朝のテレビは倒れ 
あたらしい産道へと 母たちが帰っていく 

「濁った泥水のなかでしかわたしの刻印は呑まれ/ない。

    (未明に
     腐乱した
     一匹のフナの眩い 
     腹のなかで わたしは今日
     目覚めたのだ)   

文学極道

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