「いつかある日、(あらゆる)街灯に
点火されることが忘れられる
だろう」と
だけ、
書きのこして
ひとりでに椅子は傾いた
カーテンがまぶしげに揺れていた
*
コーヒーカップの底に沈んだ
よく晴れた日の
青い空から、
雨つばめがさかさまに墜ちてくる
身を乗り出して
砂に埋もれる恋人の、淫らな
シルエット
その膕を渡る風
を見た
(フェルナンドは軽やかに境界線を跨いでゆくのだ)
*
ときには
刻々とせばまる陽だまりのなかで、
リボンがほどけることもあった
「てのひらの<June>、それさえも」
濡れそぼる翼の一撃が
だれかの捕鳥網と重なりあって
それから
永遠に離れていった
*
花綵の陰から、
航海の巣から、
フェルナンド! フェルナンド!
「日没の街に
明かりを絶やさぬために
ぼくらは管制塔のように興奮し、
植栽試験場のように、ひとりずつ
他人の卵から孵るのだ」
目のくらむほどに、まばゆい「その、
けばだつ火災」が
<Soundtracks>
「日は短く、
夜は長くなる
思い出せ」
*
室内を洗い
天井をながめ
それから
ゆっくりと立ち上がり
身を乗り出した
フェルナンド
いまにもほどけそうな
夕凪の水面に
さかさまに墜ちてくる街の明かりが、
いっせいに灯るのを
見た
フェルナンド
かざすてのひらに、いまもまだ
まぶしげに揺れている
のを、見た
選出作品
作品 - 20091023_718_3890p
- [佳] June - んなこたーない (2009-10)
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June
んなこたーない