−見給え
大門氏、指差す先、
街灯の光届かず
黒い波立て
息も絶え絶えに
此方へ泳ぎ来る魚群が、
目蓋を持たぬ眼の濁りまで
嫌にはっきりと見えてしまう
−あれは、何でしょうか
−魚だ、それより、はやく石を拾い給え
−何故でしょうか
−何故、決まっている、こうだ!
直線を結ぶ石の
尖端が鰓に食い入り、
裂ける頭
めくれ捩切れ
粘る飛沫は鈍く跳ね、
無頭の魚影一つ
滑り没する
−何故、こんなことを
−何故、理由が在れば、良いか?
−
−うん、ジャイロボールの投げ方を教授しようか?
−
−変わらんよ、数匹は殺せる、が、端から数が違う
ならば何故、と
再び問う間も無く、
大門氏、投擲、次いで投擲
一石で二匹三匹
続け様に鰭が剥がれ腸がこぼれ、
沈む沈む面白いように魚影沈む
鋭角が無比の力で支配する
−止めて下さい!
−
−理由も解らず、こんな、残酷は耐えられません
−疲れたな、随分フォームも乱れてきた
−
−ほら、一遍、石を持ち給え、勿論、キミの好きに使うと良い
背骨まで凍えてしまう
石の温度が、
投げろはやく投げろ、と
痛いほど掌を急かす
浅瀬を狂おしく溺れ進む
無数に重なった鱗の闇雲な暴動を、
殺せはやく殺せ、と
−無理です
−そうか、仕方無い
−恐ろしいのです
−何れ、一緒だ、手遅れだよ
魚群が終に陸を踏む
奇形の
真新しい手足で、
石を拾い此方へ駆ける
彼らにも強く語るのだろうか
殺せ殺せ、と
ただ街灯の光が恋しい
−これは、一体、何なのですか
−見給え、来るぞ
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作品 - 20091013_455_3863p
- [佳] 進化 - 泉ムジ (2009-10)
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進化
泉ムジ