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作品 - 20091013_455_3863p

  • [佳]  進化 - 泉ムジ  (2009-10)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


進化

  泉ムジ

 −見給え

大門氏、指差す先、
街灯の光届かず
黒い波立て
息も絶え絶えに
此方へ泳ぎ来る魚群が、
目蓋を持たぬ眼の濁りまで
嫌にはっきりと見えてしまう

 −あれは、何でしょうか
 −魚だ、それより、はやく石を拾い給え
 −何故でしょうか
 −何故、決まっている、こうだ!

直線を結ぶ石の
尖端が鰓に食い入り、
裂ける頭
めくれ捩切れ
粘る飛沫は鈍く跳ね、
無頭の魚影一つ
滑り没する

 −何故、こんなことを
 −何故、理由が在れば、良いか?
 −
 −うん、ジャイロボールの投げ方を教授しようか?
 −
 −変わらんよ、数匹は殺せる、が、端から数が違う

ならば何故、と
再び問う間も無く、
大門氏、投擲、次いで投擲
一石で二匹三匹
続け様に鰭が剥がれ腸がこぼれ、
沈む沈む面白いように魚影沈む
鋭角が無比の力で支配する

 −止めて下さい!
 −
 −理由も解らず、こんな、残酷は耐えられません
 −疲れたな、随分フォームも乱れてきた
 −
 −ほら、一遍、石を持ち給え、勿論、キミの好きに使うと良い

背骨まで凍えてしまう
石の温度が、
投げろはやく投げろ、と
痛いほど掌を急かす
浅瀬を狂おしく溺れ進む
無数に重なった鱗の闇雲な暴動を、
殺せはやく殺せ、と

 −無理です
 −そうか、仕方無い
 −恐ろしいのです
 −何れ、一緒だ、手遅れだよ

魚群が終に陸を踏む
奇形の
真新しい手足で、
石を拾い此方へ駆ける
彼らにも強く語るのだろうか
殺せ殺せ、と
ただ街灯の光が恋しい

 −これは、一体、何なのですか
 −見給え、来るぞ

文学極道

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