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作品 - 20091013_449_3862p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


crabe en octobre 十月の蟹

  はなび

ライオンの口から 
緑の水あふれ
わたしは目を閉じる
ほとぼりの冷めぬ朝

男は後悔している
焼け爛れた野原に立って
ポケットに銀の
シガレットケースを
貼り付かせて



茫々とした美しい蟹が
さわさわと鳴る

「よく噛んでよく噛んで」

咀嚼された海燕のスウプが
大海へ流れ込む

野牡丹の花びらが 
紫色の煙になり
シガレットケースに 
仕舞われる

わたしは 
よくある飲酒癖の放浪者にたずねる 
道や信号の色の変化について

「パリでは…パンは棒ではなく船だ」

ゴム底の靴が鳴る 
傘をとじる



船は下水道を通り
わたしの頭上に鰯雲をつれて
出現する ある日

5月は温めている
10月の家で沈黙を

植物を象った刺青は
地図そのものの様に
彼らを奥深く導く
枯葉の下で行われていること

狼の銀色の尻尾を
きれいに片付ける扉



昆虫が風にさらわれ
複眼が野ざらしである

シフォンの羽の粉砕
10月の呼気

地下鉄が乾いた音を立てはじめると
わたしは目を閉じる
男の背中にてのひらをあてる
嚥下運動のゆくえに耳をすます

文学極道

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