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作品 - 20091009_393_3855p

  • [優]  出立 - DNA  (2009-10)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


出立

  DNA

  


届かないまだ手、を延ばして あ いたがえ
たゆ びを配るぼく たちは林道を (か)
たどって淵辺へと た くさんの息吹を 摘
んだ(ね) その穢れ をまとって も も
う慌てない(で) 短か(か)く 身/直に
護って いるから きみも知って いる 隣
町の 水夫が ま もって いるから 穏や 
か に綴 るおれの うす い 薄い紙に 
いつの火か、を 穏や か に刻んでく れ



この七日のあいだに朽ち果てた
獣の数をかぞえたら視力が衰えた 
隣人たちは枝葉をあつめ火を焚き 
朽ちた屍が燻され 絡まった蒸気が 
濁ったからだを覆った 



翔んださ き から 不 浄の深沼に 足
(もと) をすく われ 転ばな い方法
を 蝶々 は捨てた 翌日に はこどもたち
が 羽化を は じめ 繰り返される 転倒
に あたらしい希み は絶たれ たしかし 
ぼくたちには 脱ぎ 捨てられた 体皮 が
ある



象られた獣たちの足跡 のあまりの小ささ
に手を合わせ かつて踏み固められた刹那 
に残っていた湿りを想ってきみは 思わず
くしゃみをした      



轟々と(う)なってい いる 火と雫、余さ 
 ずに 食ん で かじか む まだ手、を
延ばして ぼ くたち は(さ)サワ って
いる(ね) 摘み 穫っ た 息吹の ケッ
ペンで (か)き、つけて いるから たと
え ば「ゴウ(業)」なども はや 聴
(こ)えなか った どう か 荒らさない
(で) きみが贈ってくれ た涼しく貧し 
い 琥珀いろ の数珠をたずさえ、わた し
たち は今日 しゅっ たつ します

文学極道

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