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作品 - 20090530_763_3554p

  • [優]  Euglena - ミネタネミ  (2009-05)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Euglena

  ミネタネミ


台風三号は
わたしたちの知るはずもない海のうえで
消滅してしまった。
つめたいの
だけが記憶よ って
酔って砂浜を
ほ乳るいとして歩いた、も
消滅した。
空の底辺とてっぺん
くじらの背をうつ音、波、すきとおる、宙の、海。
 海って水からできてるんだって
って五才のわたしがいう。
雨が降るカレンダー、
降った数字の、たくさん。
台風三号 は
きっとまた、うまれるから
わたしは母と、庭に
消滅してしまった三号の
おはかをつくった。

声がみどり色の
子どもはパンジーの花びらを
滑っている。
あか色やおれんじ色や、の
はしたない を。
つつつつつつつつつ
と、指でなぞったあとには
体温 と 産毛 が
うねりぬねりと
踊っている。
子どもたちは
茎のなかに落ちていっては
茎の表面をよじのぼって
また滑っていく、回数が回数でなくなるまで滑る
らしい。
花びらは土まみれに
なって、せぴあ
風に揺れている。

「傘をさすと
ずいぶん切迫 した
気持ちになって傘なんて、
放り捨てたくなるのだけど
捨てたら捨てた、で
(ちゅうもく )されて
ちまつり、にあげられるん」
だってーそれってそれって、七ふしぎ! 
なんてもんじゃなく今日は
睦月です と
テレビのなかの(…の)
なかから膜をかぶったままの
キャスターがにこやか
です

ユー・ノウ? と
お早う の
違いについての戦争を
繰り返しているのは、もはや
人間くらいで
わたしは町に
(猫は川原に)
その残骸を拾いにいく。
 ウイスキーの壜
 (魚のほね、とうめい)
 チューイングガムのべとべと
 (蛩のあしあと)
 月のかたちの首飾り
 (みずからの尻尾)
家はまたつくればいいと
父親が子どもの頭を撫でた。
子どもの頭はころがって
うん と
いったみたいだった。

せいそう。
成層圏をこえたらさあ
星と星と星、星星と星とと が
感染して
しあってて、
俺にもうつんのかなあって
思ったんだけど
感染しなかったよ
という、こいびとの
背中のまっくろの 子(ふく数)
潜伏 しているから
秘密 なんだから
早くシャツ着てって、いってってててて
わたしに いう。
(へんじ)
わたしたちの子どもよ
あなたがうム、のよ
知らないまま、うムの よ。

サボテンの棘を
とがった部分を
マルく研磨しておくこと は
おばあちゃんの遺言で
だけど家には
アイビーしかなかった。
のび、伸びて伸びすぎる、
はさみで切られていく、
ような
アイビーしか ないの

土を掘り
掘って
掘ったら砂になる、砂は
一時も沈もく。したくなくて
のたうちまわる
から腐ることはなく、
火傷する。
火傷はいたいから
一刻も早く。病院にいきましょう
いやだ、っ
いやーだーいたいっかむっらっ
や、なぁーのー、の
のたうちまわってるミイラ。
掘るのやめたら腐って、シなないんだぜって
どうせ嘘だろう、
って、わ らった?
あきらめたよに
わらった腕は腐って
溶けながら、垂れていく。

飛ぶ。
飛ばない鳥の羽根の
じゅんぱくで。
垂れた腕、は
だらんとぶら下げたまま
飛ぶ。
たちうちできない
生地の
海は水でできている
五才のてつがく
つめたいの
だけが記憶よ って丸い消滅。
空は
めくれあがって背の高い、
裏面はきっとモザイクで
保護 されている、
いるの は、弱いって知っているから、
底は、てっぺんは。
つぎは
(つぎつぎ、は)
くじらが腹をうつ音、たわんだ宙に、も一度、うつ。
飛ブ。
(鳴く、 )
まだうまれないものたちを
横切って
波のつぶとつぶのあいだを反る、
(シなない)
(シなない、)
ここは、ここ は
海じゃなく空 じゃ な く
すみきった、眼の。

眼の、虹の。

文学極道

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