散文の雨(反転)
(ハツカネズミは故郷を思い出し、
オレンジを切る手から逃げる)
セーターをたたんだ、冬からは遠く、夏からは遠く、
ひらがなのセーターはちぢんだまま、
知らぬ人に送り、
返りを待って、踵を打つ、
水平に、
体は、横にならずに、
口から七日間の雨、
傘を差したまま、
燕は巣をつくり、
軒先では、蛙が、
セーターを着込む、
オレンジを切る手から、
ハツカネズミが、
故郷を思い出して、
季節に返る、
朝がまぶしくはなかった、
カーディガンを洗う、
蛙と一緒に、
回る洗濯機の中で、
泳ぐ、緑の、
一匹が、手のひらに、
つかまるまで
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作品 - 20090508_395_3509p
- [佳] 散文の雨(反転) - いかいか (2009-05)
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散文の雨(反転)
いかいか