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作品 - 20090505_322_3504p

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道のはた拾遺(1.2.3)

  鈴屋

1.電柱


一叢のカタバミ
埋もれた茶碗のかけら
蟻の巣など
道のはたの
一隅
灰色の棒、電柱が立っている
剥がし残したビラが
風になびき
突き出ているボルトをたどり
腕金
トランス
碍子
黒い
   線 線 線
   線  線  
    線  線
    線     
青空

はるかな
虚無に
ジクジク
刺さってゆく
光る棘
曳く
一すじの
飛行機雲
昨日死ぬべき者は昨日死んだ、今日死ぬべき者は今日死につつある
線をよぎる
  鳥
      鳥
苦情受け付けます




2.田園 


春のひと日
はからずも
ここまで来た

町の外れ
造成地は放置され
土ほこりが道を這う
日がな歩き暮らすほかない、わたしは
労働者だが、無職だ
おお、無職、このさびしく歪んだ呼称を愛す
この自由のさびしさを愛す

野に出でて
日差しに背が汗ばむころ
菜園と草野が青々と広がり
とおくちかく、緑わきたつ森に囲繞され
はるか電柱がならんでいるあたり、道はつづいていく
雲は光り輝き、とうとつに
風が狂えば
畑も森もいっせいに白々、世界をひるがえす
おお、無職、この五月の田園のただ中で
わたしの無職は雄雄しいか

泥をふみ
草をふみ
道はたによれば
雀、ツメクサ、ベニシジミ 
スイバ、カナヘビ、蜂、ハルジオン
おお、無職、不吉な人影よぎるとも、かれらは
わたしにしたしいか




3.河 


杭が立っている
女が立っている
犬が舌を垂らしている
 
杭と女と犬が動いたり動かなかったりしている
世界にはこれぐらいのことしかない
じゅうぶんだ

木が枯れていく
砂が水を吸っていく
わたしは人をやめ、夕日になるつもりだ
いや、枯れ木でもいいし、犬でもいいし
河でもいい

日と鳥が空に固定している
魚と貝が水に固定している
そのはざま、木と草と虫と獣が陸に固定している
世界は壁の痕跡であり
人についても、どこかに掻き傷くらいあるはずだ
といって、どこにも記憶などありはしない

杭が立っている
わたしが立っている
いや、わたしは流れているのであり
河だ

文学極道

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