昔、中国は楚という国に、盾と矛を売る男がいた。
曰く、その盾は堅きこと貫けるものなし、また、その矛は鋭きこと通せぬものなし、と。
野次が飛んだ。
「おまえの矛でその盾を突いたらどうなるんだ!」
つまらぬ理屈をこねた客は男に矛で刺し殺された。
他の客も黙りこくった。
少し経って馬に乗った警官たちがやって来た。
「往来で何やってんだこのやろうぶっ殺す!」
警官の振り下ろした矛を男の盾は見事に受け止め、逆に次々となぎ倒してしまった。
一人だけ逃げ帰った警官に通報されて今度は軍隊が出動してきた。
「なんだただの武器屋じゃねえか、首はねてやるからちょっと待っとけ」
いい終わる前に兵士は殺されていた。
何千人もの軍隊は
何ものをも防ぐ盾と
何ものをも突き通す矛の前に
あっという間で敗れ去ってしまう。
かくして男の盾と矛の強さに、異論を述べるものは誰一人としていなくなったのであった。
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作品 - 20090418_062_3467p
- [佳] 矛盾 - 億年筆 (2009-04)
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矛盾
億年筆