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作品 - 20090330_757_3423p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


「一条さんがやってくるわよ」

  一条



女は水しぶきに消える、まだ見失っていない、ぼくたちは手をはなさずに唇をゆ
るめていた、カモメに似ている鳥が三列になって風を切る、海の上の鳥影はシロ
くもクロくもない、水揚げを終えた漁船が波止場をはなれ、海面に浮かぶおこぼ
れに群がっている、ぼくたちは堤防に並び、真上後方からの陽に射される、鳥は
警戒しながらきれいな目つきで海を見ている、岸壁のコケを食べる宇宙人のよう
なクラゲが、女性器の割れ目を縦に開いて、体を回転させながら身悶えていた、
鳥は突然立ち上がり、風切羽を直角に構え、飛び立った、枯れ枝を手にした子供
が、割れ目を先端で突付きながら、何度も頭を震っている、女は海に飛び込み、
海の底で三列になる、カモメに似ている鳥が空中で痙攣をしながら、ぼくは真上
後方に移動している宇宙人のようなクラゲの女性器に息を吹きかけて知り尽くし
た目つきで海を見ているシロくもクロくもない水揚げされた漁船のおこぼれを子
供に分け与え岸壁からはなれながらしつこく突付いている、女は飛び、ぼくと堤
防に並んで、金色の光線に射抜かれた鳥が赤い空にあまねく浮かんでいる海の底
から無存在の鳴き声が聴こえる、




ぼくは、四辻で口裂け女に出会った、女は裂けた口を痛がる様子もなかった、今
日は、どんな日なのかわからなかった、夕方になると買い物に出掛けて、親に渡
された今日の献立が記されたメモ用紙を使って女に向けて手紙を書いた、手紙を
書き終えて女に手渡すと、女は何も言わずにいなくなった、そっちに向かうとき
っと何かがあるんだろう、きっと何かいいことがあるんだろうと思った、ヒトは
時にそういう事件に運悪く巻き込まれてしまうんだよ、ぼくは、おおむねそうい
うことを女の手紙に書いたに違いない、気が向くと決まってぼくは相手を選ばず
にそういう話をしたがるのだ
   


「女は翌日決して水着に着替えなかったというがスノーフォールのクッキーカッターで左手をくりぬいてぼくはレジに並んだ三つ子の二人目に空いている禁煙席に通して欲しいんだと言った、女は、いつまでも喜ばれるサービスには限界があるのよという顔で、だけれどぼくはそういう類の話には正直うんざりなんだ、だって物事の終わりにはまるできりがないし、

文学極道

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