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作品 - 20090314_552_3390p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


「市ヶ谷物語」

  吉井


(一)

どこまでも黄色い石畳を歩いていた。腫れた上唇した少女に会うために袈裟を
新調した僧侶と何度も何度もすれ違った。

(二)

黄色い建物。東京エデタースクールの二階から見える外堀にはシュプレヒコー
ルとレディースの爆音が流れ夕暮れの七時半がリピートしている。

(三)

もげたブーツが薄い液体に浸っていた。マンホールの天井で冬眠している成虫
になりかけた蝶の燐粉がくるぶしに溜まって発光している。

(四)

マドラス柄のマフラーをしていた。いつも市ヶ谷の駅のホームの点字ブロック
の上に立って僕の視線をうなじで吸収して耳元を少しだけ肌蹴ていた。

(五)

ぼくは飛び乗った。きみは押されて人並みに埋もれきみと僕は同じぐらいの背
丈だったからほとんど唇が触れあうほどに見つめあった。

(六)

僕が放った黄色い矢はきっと何かを射抜いたに違いなかった。大雪の榛名山ま
で馬肉を取りに行ったきみの唾液はとても苦かったから。

(七)

寒い国から来たスパイのように英語でアクメを感じるきみがいる。G海綿体から
ポルチオにかけて僕のスノーボードを滑らせようと思う。

(八)

よゆうあるあそびがしたいの。まどべでかみをすくうきみのけんこうをそこねた
はだのしるえっとをみたよくじつぼくはせんろをはしった。

文学極道

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