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作品 - 20090306_453_3373p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


種グマのヘンドリック

  ミドリ


妹が妊娠したんだ

リビングで毛づくろいをしていたヘンドリックが
突然そう言ったので
ぼくはビックリして振り返った

おまえ妹が居たのか?
いちゃ悪いのかよ
悪かないけど
そんな話一度も訊いたことがないぞ
昔モデルとかしてたんだけどな

ヘンドリックは少し自慢気に言った

会いたいか?
会いたいっておまえの妹だろ?

素直に会いたいって言えばいいんだよ
おまえ今モデルってとこに食付いたろ?
大体 顔を見ればわかるよ
目がエロいもんな

妊娠って一人じゃできないよな?
まぁ 普通はな
相手の男は?結婚してるのか?

      ∞

夏至を過ぎた
6月の末頃の話だ
喫茶店で待ち合わせたぼくらは
エアコンの壊れた喫茶店で
アメリカンを注文し終えると
スポーツ新聞をひらいた

今年はジャイアンツが独走だな
舌打ちしながら
ヘンドリックは呟くように言った

ぼくは時間が気になり
しきりに腕時計に目をやったが
彼女が姿を現すはずもなく
それもそのはずだ
ぼくらは約束の時間の2時間も前に
この喫茶店に着いたのだから

ヘンドリックは新聞の風俗欄を
小マメにチェックしていた
時々彼が そんな店に出入りしていることは
知っていたが
なんだってこんな時にまで!
ぼくは激しく憤りをおぼえ
ガン!っと席を立った

鼻くそをほじりながらヘンドリックは
間抜けな顔をしてぼくを見上げると

どうした?しっこか?
などと言うので
ぼくは言った

ああ しっこだ!
ついでにクソもしてくる!

ちゃんと拭いてこいよ
時々湯船に実が浮いてることがあるからな
世話焼かせんなよ
などとふてぶてしく言った

       ∞

約束の時間の
午前11時になると
背の高い男が現れた

店内をしばらく見渡すと
こちらをギュッと見つめて
躊躇なく向かってきた
怒気を含んだ顔に
殺気がみなぎっているのがわかった

ぼくらは身構えた

ヘンドリックってのはそのクマ公かァ あんッ?
失礼じゃないですか 自己紹介もなしに
ぼくはふたりの間に割って入った

男は少し冷静になり
悪かったな 坊や
そこどきな
そう言ってぼくの肩をガツンっと押した

そして男はヘンドリックの胸倉をガッと掴むと
こう言った

おまえかァ?
俺の嫁に手を出して
孕ました変態っていうのは アンっ?

まさかとは思うが
ヘンドリックは
時々そういうことを
やりかねない男だった

文学極道

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