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作品 - 20090219_288_3349p

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恋歌連祷 11(仮題) 

  鈴屋

そしてすべてが黒い

恋人よ いまあなたはこの世界の人である 2007年9月
東京 立川市曙町の舗道であなたはケイタイを耳にあててい
る あなたの唇の端から笑みが広がり手をふる プラタナス
の葉がいっせいに翻る そしてすべてが黒い 河だけが光っ
ている 恋人よ いまあなたはこの世界の人である 曙町の
アパートの三階の窓からあなたが呼ぶ 笑顔が翳る 河だけ
が光っている かぼちゃのスープおいしい? わたしは肯く
スプーンの手を休め わたしはわたしのあなたへの愛につい
て説明する あなたは指先のマニキュアを見つめながら頬笑
んでいる ルージュが伸び縮みする 鉄橋を電車が通過する
そしてすべてが黒い 河だけが光っている 立川市曙町の舗
石の隙間に一本の螺旋形にねじれた草が生えている 岡野歯
科クリニックの前であなたのヒールの尖り具合についてから
かう あなたはわたしの脛を蹴るまねをする わたしたちだ
けが笑っている 恋人よ いまあなたはこの世界の人である
アパートの三階の窓からあなたがわたしを見送っている 恋
人よ わたしはいぶかる あなたの顔が指に見える 指紋が
渦巻き そしてすべてが黒い

曙町は普通だ
河だけが光っている

文学極道

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