I
加湿器の湯気が床を這っていて
倒れている妻の背中を濡らし
気がつくと
埃のついた二階の窓から
新年を祝う汽笛に耳をかたむけながら
生あくびをしている
ぼくの首を
硝子に映ったぼくが見ている
II
岬に抜ける農道に立って
日の出を見た
手鏡に乗った裸電球のように
軽い光球だ
家に戻ると
枠にビニール傘をぶら下げた浴室の窓から
精神病みの男が侵入していて
四枚組の風呂蓋の上で縮こまり
顔だけを切り抜いた恋人の写真を手形のように差し出すのだ
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選出作品
作品 - 20090103_387_3239p
- [佳] 冬 - 吉井 (2009-01)
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冬
吉井