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作品 - 20081129_918_3178p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


狙われた街/狙われない街(メトロン星人)

  Canopus (角田寿星)


こんな日はめったにないけど

たとえば
なにもかもが真っ赤に染まる絵のような夕焼けの日

空は思いのほかよごれてしまって
あるいは記憶のなかの夕焼けとどこかちがっていて
こんな日はほんとうにめったにないけど

そんな見事な夕焼けの真ん中で
すきとおるように立っている虹色の何かがいたら
それはメトロン星人なのだ と
あきおさんが教えてくれた

そんな日はタバコを喫ってはいけない
タバコに仕込まれた毒が頭にまわって
誰かを傷つけたくなる
それはメトロン星人のしわざなのだ と
これもあきおさんが教えてくれた

子どものぼくはタバコを喫わなかったが
母子家庭の生徒をいじめる教師
何かと絡んでくる不良もどき
傷つけたいヤツはいくらでもいた

ぼくは体をきたえた
背は一年に30センチも伸びた
大人になって タバコの味をおぼえて
それで
多分
きっと
誰かを
傷つけながら
生きて

それはメトロン星人のしわざなのか
あきおさんは教えてくれなかった

あきおさんは逝ってしまわれたのだ
2006年11月29日午後11時45分 享年69歳
あきおさん最後のウルトラ作品で
メトロン星人は地球を去っていった
こんな星いらん 捨て台詞をのこして
あきおさんもこの日本を
去っていった

折にふれてぼくは
今もさがしてしまうんだろう
あきおさんのおもかげを
いつか視たはずの
記憶のなかの
あの夕焼けを
そんな日は
めったにないのだけど
そして
夕焼けの真ん中に
蛍光色の影をおとす
メトロン星人の
後ろ姿を
今も 

ぼくは。

文学極道

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