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作品 - 20081118_679_3156p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


 八十八夜語り ー秋小寒ー

  吉井

二十三夜
 まだ生あたたかい人型の栞が、投射された光の帯の中を漂っていた。蝉の羽
 ばたきの空き間をくぐり抜ける自由中性子が運動量を失って120億年経った
 朝のことである。

   また見えてる。
   なにが?−永遠さ。
   太陽と番って
   煮え滾る海のこと。(*1)

 誰も気づかぬように

   じっと見守る魂よ、
   そっと打ち明けようか
   欠落した夜と
   炎と化した白昼のことを。(*2)

 お前らが沈み込む

   人の世の欲目から
   まわれ右の浮かれ騒ぎから
   お前はおさらばして
   揺れる炎に身をまかせるのだ。(*3)

 あの地平線から

   お前だけしかいない、
   サテンの燠火よ、
   ただ黙々と身構えて
   音をあげもせず燃え続けるのは。(*4)

 俺は生れ出るのだ

   絶望の空の裂け目から、
   二度と陽は昇るまい。
   くたびれ儲けの銭失い、
   何処も彼処も地雷は踏まれたまま。(*5)

 Nous ne sommes pas au monde.(*6)

   また見えてる。
   何が?−永遠さ。
   太陽と番って
   煮え滾る海のこと。(*7)
 
 まだ生あたたかい人型の栞が、投射された光の帯の中を漂っていた。同一の
 正六面体が無限大の空間にぎっしり詰まっていた。同一の立方体の数は無限
 数だったか。同一の立方体の数は、その辺の長さが増せば数は減り、辺の長
 さが減れば数は殖えた。無限数が増減する。無限数の絶対的安定が崩れた朝
 のことである。




☆註解☆☆☆☆☆
(*1)Arthur Rimboud(アルチュール・ランボー)の詩[L’Eternite]  (『永遠』)
の第1連。訳詩は吉井。原詩は以下の通り。
  Elle est retrouvee.
  Quoi? ― L’Eternite.
  C’est la mer allee
  Avec le soleil.
(*2)第2連
  Ame sentinelle,
  Murmurons l’aveu
  De la nuit si nulle
  Et du jour en feu.
(*3)第3連
  Des humains suffrages,
  Des communs elans
  La tu te degages
  Et voles selon.
(*4)第4連
  Puisque de vous seules,
  Braises de satin,
  Le Devoir s’exhale
  Sans qu’on dise:enfin.
(*5)第5連
  La pas d’esperance,
  Nul orietur.
  Science avec patience,
  Le supplice est sur.
(*6) [Une saison en enfer] (Delires-?) 『地獄の一季節』(「錯乱-?)からの引 用。訳すと“俺
たちはこの世にいない。”
(*7)第6連
  Elle est retrouvee.
  Quoi? ‐L’Eternite.
  C’est la mer allee
  Avec le soleil.

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