夏は背を裂きかろやかに
飛散してふり返らず
最早 私は
何も抱かない/抜け殻
斜光が冷たく昨夜の灰を崩す
ためいきに似て
コップの汚濁から
折れた首を差し出す向日葵だけが
耳を傾けているようだ
脈の乾いた枯れ葉に
たちまち閉塞する狭い通りで
君は思想を持つべきだと
友人がくれた本を
売り棄て/一頁も読まなかった
最後に会った時
髪切れと笑う
新しい背広を着た彼の
ひどく痩せた顔を思い出す
路上に仰向けで少しずつ
死んでいくふりをする私は
半ば狂って
いるだろうか/友人よ
軒下の野良猫がつまらなそうに
あくびを噛んで
本の代わりに得た
チョコレートを割り投げてやっても
足早に跨いで逃げた
水のほうが温かく
解れる指先から
細く尾をひく泥が流れた
コップに秋桜を灯し
見惚れ/きっと明日も美しい
子供が生まれたという
友人の葉書へ
今度私にも抱かせてくれと
向日葵の種子を添えた返事を書く
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選出作品
作品 - 20081114_554_3151p
- [優] autumn - 泉ムジ (2008-11)
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autumn
泉ムジ