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作品 - 20081110_425_3139p

  • [佳]  団欒 - ともの  (2008-11)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


団欒

  ともの

わたしは咳をしている
風邪の症状ははすぐに消え、咳だけ残るのは、相変わらずの体質だ
日曜日
止まらない喉のかゆみを携え、部屋から抜け出る


国道をのぞむ駅近くのカフェ
外を眺めている2階
高校生はおしゃべりに夢中
隣の人は台本のせりふ覚えに没頭
今日に限っては 強く感じる
大きな窓のもったいなさ

雨に濡れた路面、統一感のない傘の動き
看板の字を読み始めればきりがない
咳が出始めればきりがない
ココアを喉に染ませ、べったりと、砂糖の膜を張ってやれ

だれかに偶然会うことなどない街で
だれかに偶然会うことを期待して
だれかに偶然会ったら困る普段着の自分
だれかなんて特定多数を描いてみれば嘘
だれかなんて特定少数にすぎないという真
だれかに偶然会うことなど決してない街の
カフェの椅子に腰掛けても 相変わらず
思い出さないと決めたことを思い出す
肺とは違う 胸の奥のどこかしらがが緊縛され
また咳をする
深すぎる雨雲が導く強大なマイナスの力 
追い詰められて
逃げよう 席を立つ 逃げる 

駅の上の高いビルの展望台にのぼろうか
高いところから見下ろして
雨の街に動いているものを見てみようか
思案した
国道がわかれる三叉路を 小雨の日曜を
俯瞰しようか
ひとりで

ひとり高い所に行くのが好きだったことが
過去のものになってしまったように思えた
手を添えて喉を鳴らした 一度で終わった
展望階ゆきのエレベーターには 乗らない

 
 あのときのあそこは 三叉路どころか 六叉路だった
 行く先がわかれすぎていて 惑わされてしまったのだ
 
 あのときの風邪は何も残さず
 由来不明の風邪が咳を残した

 
救急隊員がひとり、ふたり、走っていった
年季の入った白いヘルメット
わたしはゆっくりと、歩いた
余白と区別のつかない、手帳の今日のページ


傘を差す手はこごえたが
部屋に帰れば頬は熱く 熱があるようだ
また咳をして 
止まらず 止められず 腹が筋肉痛だ
ほおっておくほかないので
抱き枕を抱えてPCに向かい

団欒をした
日曜日

わたし 抱き枕 PC 

今日は咳を招いて

いつものみんなと 団欒をした

文学極道

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