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作品 - 20081002_769_3060p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


島の女

  ミドリ

砂糖黍畑の間を
女と歩いた思い出がある
二車線の道路に
茶や緑の葉っぱがせり出し
そよいでいる
陽光に放たれたその道は
とても荒れていた
一時間歩いても
車は通らなかった
サングラスを外したぼくは
女に言った
戻ろうよ
待ってもう少し
一時間だぜ
時計を見た
もうすぐ東シナ海だから
汗が頬を伝う

女は
町で働いていた
いわゆるホステスだ
昔は農協で働いていたの
声を潜めるように言った
あぁ農協な
面倒なところだ
女は眉間に皺を寄せた
夜の女の
言葉は信用ならない
昼間食べたソーキそばが
腹にもたれはじめる
麺の上に乗っかってた
生焼けの肉のせいかもしれない

すべてに嫌気が差したころ
海が見えた
ほらね
女は子供のように
目をくりっとさせて言った
あぁ海だ
間違いない
するりと腕を回した女が
ぼくの手をぎゅっと引っ張った
海風よりも強く
確かな感触だった
放置されたユンボやブルドーザーが
浜の近くにあり
ぼくらは幾度か植物の根っこに躓きながら
浜へ出た

スニーカーを脱いだ
ホットパンツからするりと伸びた
女の白い足が
はじめて目に入った
ねぇ綺麗でしょ!
ここから見る眺めが
一番スキなの!
ぼくはサングラスを掛けなおし
女に言った
確かにオジサンにも
悪くない景色だ
なんだ
ノリの悪い人!
そう言うと
ぼくにくるりと背を向け
女は
裸足のままで海に近づいて行った

拝所の中に眠る
まだ陽の昇りきらない朝の
白いコーラルの道に
海風に塵埃がパッと散る

文学極道

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