遠くへ、じりりりと
八条口が大きく広がって
宇宙のノドちんこを官能的に触るように
水に溶けた塩のような関係性の匂いを嗅ぎ分けて
グローバリズムが歩いているけれど、
立ち止まる方法を知らない文庫本のうえに転がる、
使い古された漢字の数々が靴擦れして
巻き爪と魚の目の打楽器が「光った」と思うと凝固して
空に消えてゆくよ、待ってくれ。
俺はそんなに早く演奏出来ない。
昨年付けで鳥獣戯画のバイトをクビになったママに、
分裂は優しさと教えられて苦虫を噛んだが、
永遠でないことに至極安心する。
こうなったら玉砕覚悟で嘘泣きを記号化して、
モンマルトルに葉書を書こう。
土の匂いは美しさだけで生きてゆける、
ありとあらゆるものに相似しており、
意識していないとすぐに違うものに結合してしまうから、
取り扱いには注意しなければならないらしいからね。
向かいの席に座っているどこか古臭い、
しかし齢にして僅か五歳にも満たないであろう若者の
イヤホンから漏れる音質の悪いCジャムブルースのことは、
どうやら忘れることが出来ずに、俺は孤独に厭きた、
孤独に厭きたとぶつぶつ呟きながら
ハンドクラップでスウィングを楽しんでしまう始末の悪さ。
おいおい、しかし勘違いしないでおくれよベイビー。
俺はただのパラノイアじゃないぜ。
先月の朝一番、
最初のセッションが終わって携帯電話の電源を入れると、
留守番電話センターからたくさんのコールが。
ひとつずつ聴いてみると、ジーザス。
それらは関空の検疫からで、なんと赤痢菌が検出されたとのこと。
要約すると「ファッキン野郎、折り返し電話下さい」だった。
消毒、隔離、入院など色んなことを考えて落ち込みそうになってしまった。
戦時中じゃないんだぜ、いい加減にしてくれ。
イエプルの水がすぐに思い浮かんだ。
しかし深刻になってはいけないな、いけないよなベイビー。
調子はよくないがよく見えるよ、この世界がさ。
人生の縮図そのものだよ、
笑えてくるじゃないか。
ママ、俺たちにはいつだってきのこ料理が必要だ、それとカレー。
欲望と云う欲望にくるまれて不幸の幸福のまま死にたいと云うようなことを
新潮文庫の百八十六頁でハリー・ハラーは告白するが、
君の歩幅で歩いてくる死はどうだ?
チャールズ・ミンガスの弾くベース音が
淫靡な雨音と、終わりの美学のない人類の会話の中で止まらない、
宇宙へと届く、音楽。
最新情報
選出作品
作品 - 20080616_813_2838p
- [優] Allergie - はらだまさる (2008-06)
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Allergie
はらだまさる