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作品 - 20080527_318_2791p

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新婚生活 (ラフ=テフ外伝 パート2)

  ミドリ



間もなく激しい雨が降り出してきた。

バルコニーのプランターを小走りに部屋の中に取り入れるまなみ。
電話が鳴る。
夕暮れの晩夏の窓辺に並んだ、ビルディングが雨の中に霞みはじめる、
猫の額ほどのふたりの小さな北向きの部屋。
まなみはそこでクマと一緒に、暮らし始めた。

クマが受話器を上げると、
「俺だ」というくぐもった声がする。
明らかにオッサンの声だ!
ブチ切れたクマは
「”俺だ”でわかるかっ!こらオッサン」っと怒鳴った。
オッサンの声はさらに続けた。
「まなみに取り次いでくれ、新しいカモノハシが二匹手に入ったと」

プランターを取り込み終えたまなみが、
「誰?」
なんて涼しげな顔で訊いている。
「知らないオッサンが!カモノハシがどーとか言ってるぞ!」
クマはブチ切れたまま、まなみに言った。
「そんなにすぐブチ切れないでよ、まるで輪ゴムみたいに・・」

クマから受話器を受け取ると、まなみはオッサンと楽しげに話し始めた。
「うっそー!?カモノハシが二匹?マジでー、見た〜い。о(><)о」
みたいな会話を、クマは右手の親指を咥えながら、1時間も聞いている。
さらに2時間たったろうか、漸く話が一段落つき、まなみが受話器を置くと、
クマは目に涙を溜めながら、ソファーに横たわってグーグーと寝ていた。

「風邪ひいちゃうぞ」
そう言ってまなみは彼に毛布を掛けた。
「今ね、カンガルーさんから電話だったの。船の上からよ!あなたに、
一番逢わせたい人なの」っと。
彼の寝顔に頬杖をつきながら話しかける彼女。

夕立はなおも強く、マンションの窓ガラス激しく震わしていた。

文学極道

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