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作品 - 20080526_271_2786p

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赤い川

  田崎


赤い川を覗こうと
熱し切った手足は捨てた
また生えてくる別の手足を
訝しみながら
川を覗き
鳥の羽のように手は空をまさぐった
私は
手を憎み
固くなった足を
後ろに向けて
解し
折り曲げながら
互いに挨拶をするような
柔らかな曲線で放棄した

旋回する鳥は
羽をどろっと零し
油の色彩を
油性の時間に掻き混ぜられながら
演舞する仕草を残像として
抽出し結晶させ
階段状に降らし届ける
だから
私の手足はすぐに腐る
それは錯覚かもしれないが
腐爛しているのかと
押さえ切れずに
手足を
手足ではなくしてしまう

赤い川に
手足を何本も落とす
(枝のない
 直立した木を見るように
 鳥たちはそれらを見ている)
流量の少ない川は真っ赤で
手足であったものから
漏れるものがなくても
生きている私の鮮血を
川に
覗き込んでも
私の顔は見えないが
大分昔から
川が流れていることを
知っていた

文学極道

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