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作品 - 20080509_857_2755p

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お茶を飲む

  ともの

一心に書き物をしているとき、
お寺の鐘の音がかすかに聞こえた。
順当な、而して唐突な午後の終わり。
その報せの音。
鉛筆をおいて、
冷たいお茶を飲む。

子供たちが帰る。
時に歌い、話し、笑いながら。
ボールを蹴りながら、帰ってゆく。
窓の外の風景が、
手にとるようにわかる。
眼鏡を外し、
甘納豆を食べる。

夕暮れ時、
ひとりなんだ、と思い出す。
自分はひとりなんだ、と思う。
人はみんなひとりなのか否か、
考えて、しばらく逡巡する。
西日が遠のく。
また、お茶を飲む。

宅配便が届いた。
母から届いた。
手紙が入っている。
ありがたく読み終える。
だが、いまここにいる自分は、
やはり、ひとりだと感じる。
谷底ちかくに、
誰にも気づかれず、
佇んでいるような自分だ。
西日は消えかかり、濃ゆく燃えている。
送られてきたばかりの、饅頭を食べる。
そして、またまたお茶を飲む。

文学極道

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