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作品 - 20080423_391_2712p

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恋歌連祷 6(仮)

  鈴屋

月は高く
植物は帰化する

あなたと手をつないで秋の花を観にいく 河原に泡立草と
芒を観にいく 明けるのか暮れるのか雲が垂れ込めいつま
でも仄暗い 対岸の丘陵の中腹にゴミ処理施設の煙突が見
える 鉄橋を電車が渡っていく なぜいつまでも暗いのか
クレゾールが臭う 河原一面泡立草と芒の金銀の斑がぼう
と浮いている 土手から河原に降りる 芒の葉陰であなた
の口を吸う あなたの顔が風に掃かれ白々瞬く 足許で人
が死んでいる 川岸でも半身を水に浸しながら人が死んで
いる その爪先が浮き沈みしている 土手の草の上で人が
死んでいる あちこち累々と死んでいる クレゾールが臭
う 上流の空の果てが傷口のように爛れている ゴミ処理
施設の床にも煙突の中にも死体が詰まっている 電車のシ
ートにも床にも死体が転がっている あなたと手をつない
で死体を見ていく 橋脚の下でわたしの母が死んでいる
波際であなたの姉が腐っている 姉の右の乳房が陥没して
いる 泡立草と芒の中に分け入り わたしたちは向かい合
ってしゃがむ あなたの口を吸う あなたの顔が風に掃か
れ白々瞬く 花を観に来たのだから 仕方がないのだから
わたしたちも死ぬ準備をする

尾長が叫ぶ どこかで
今日が始まる

文学極道

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