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作品 - 20080318_910_2666p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


日暮れまで

  鈴屋

せめて喉をひらくほどの
風がほしい

倒れかけた一本の杭が
有刺鉄線にかろうじてぶら下がっている
足もとの草むらから椋鳥が飛び立ち
驚いてみることも救いなのだと
顔をあげれば、電線から垂れている紐の類

  あのひとの部屋で
  あのひとの裸体をステンドグラスみたいに
  区分けしてきたんだ

道のゆくての黄ばんだ空に
家や木立や電柱が、切り絵のように立てかけられて
歩いていっても崖、明日なんかない

蚊柱に立ち止まり
とある一匹を目で追っていくのは
存外たやすいことがわかる、けれども電柱にじゃまをされ
「耳鼻咽喉」って、どこの言葉?
踏み込んでしまった水溜りの
油膜の暗い虹
吸殻
ボルト
曲がっているのは釘?
ミミズ?

  あのひとの部屋で
  あのひとの内臓や管のひとつひとつを
  十二色のパステルで塗り分けてきたんだ

薄闇のなかに
ひとむらの小手毬がしろじろ浮かんでいる
住宅の閉ざされた窓々のひそやかさ
レジ袋を満載したママチャリにぬかれ、それきり
路上に人が絶えて、ふいの
風のように
学園のチャイムが中空をめぐり
放浪の予感?
ふりむけば
巨大な夕焼けが逆巻いて

文学極道

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