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作品 - 20080211_252_2605p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


さらばドラッグストア

  まーろっく

俺がレジの娘に恋する時

背を丸めた買い物客のむこうに
垣間見えている
後ろで結った明るい髪や
淡い紅色の可憐な頬や
また彼女の背景にあるおびただしい
くすりの箱や菓子や缶詰ごと

恋する時

空気はもっと乾いていなければならない
湿った日陰のない高原の異国のように
くまなく晴れ渡っていなければならない
さびしいバス停などはごめんだ
埃たつ狭い通りを驢馬や荷車が
くすりの箱や菓子や缶詰を積んで
にぎやかに行き来していなければならない

恋する時

奇跡のない国はごめんだ
愛もからだも缶詰もくもりない欲望で
見つめられなければならない
闘鶏のように疑いのない目を持ち
皺だらけの紙幣のように
 健康でなければならない

恋する時

俺はウードが奏でる迷路を追わねばならない
はやしたてる群集の猥雑な声を浴び
波打つ布地の表面をアラベスクとなって
どこまでも伸びなければならない
この時転倒した太陽にむかって
パッケージの文字がいっせいに飛び立っても
けっして立ち止まってはならない

俺がレジの娘に恋する時

ふたり名前もないままで
この開放された最後の部屋である
白いレジ台の上のチョコレートバーを
きみは永久にレジ打たねばならない
天文と幾何学で浪費された数字の全部で
レジスターからふたたび世界があふれだすまで

文学極道

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