荒地
さようなら私たちの懐かしい荒地
実りを知らない荒地の春
私たちの残り香だけが香る
私たちの稲の家は
荒地の春に燃やされて
私たちは駆けていく
どこまでも遠くへ
例えば、例えば、と、
子供の様に聞く
それは私たちが知らなかった春
何れ会うことになるでしょう
あなたたち
私たちの乳母は未だに
狼の群れの中で
炎の晩をしているのだから
私たちは出て行ける
そして雨が、雷が
私たちの荒地を打つでしょう、
雨が止まる瞬間、
私たちは待ちましょう、
どこまでも長い時間の中で、
どこまでも下っていく時間の中で、
そして原野へ
私たちの野に開かれた田畑
夜、田畑につみあがる子供たちが降りてこない
私たちはそしてまた出て行くでしょう
私たちの背骨から生える
多くの原野よ
私たちの春を知らない
春の友人たちよ、
湿地帯を越えられない多くの友人たちよ
あなたたちが醜く引いた線も
いつかは雪に覆われて
この世から消えてなくなるでしょう
だから私たちは駆けていくでしょう
この荒野という緑の極地から
戦うために私たちの乳母が知らない原野へと
さようなら荒地へ逃げる春の友人たち
最新情報
選出作品
作品 - 20070816_164_2277p
- [優] 荒地 - いかいか (2007-08)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
荒地
いかいか