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作品 - 20070712_040_2200p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


猥褻物陳列罪の王様

  ヒダリテ

 昔々の遠い国、僕がいました。
 僕は昔々の遠い国で、昔々の遠い国の王様でした。
 僕はたいそう立派な王様で、たいそう立派な柴犬にまたがって、たいそう立派なラッパを吹きました。
 僕は王様でした、王様は僕でした。僕はたいそうお金持ちで、たいそう立派な柴犬はジステンパーで死にました。
 王様は悲しみに暮れました。王様は王様のちょっとしたイタズラ心から、たいそう立派な柴犬のたいそう立派なお尻の穴に突き刺したたいそう新鮮なトウモロコシがたいそう立派な柴犬のジステンパーを引き起こしたのではないかと思い、たいそうショックを受け、自分を責め、泣きました。
 泣いた後、おやつにエクレアを食べました。エクレアは王様の大好物で、「これなしじゃ生きていてもしょうがないね」と言ってました王様は僕でした。
 たいそう立派な柴犬亡き後の王様は、ヤドカリの去ってしまった巻き貝のように虚ろで、エクレアをたくさん食べてちょっぴり太りました。そんな王様に王様のあまり立派ではないお母さんは「ダイエットが必要よ」と忠告しましたが、たいそう立派な王様はたいそう立派な大型テレビで「ドリフ大爆笑」を見ていたので「ダイエットが必要」であることを理解しませんでした。
 そんなこんなで少しずつ太り続けた王様は、ある日とうとう糖尿病と診断されました。糖尿病とはそれはそれは恐ろしい病気です。やがて王様は迫り来る死の恐怖に耐えきれなくなり、少しずつへロインをやるようになりました。
 ヘロインの効果はてきめんで、王様は人間として、終わりました。
 人間として終わってしまった王様はもう立派ではなくなってしまいました。だから王様は全裸で果物ナイフを持って近所のコンビニへ行きました。エクレアのある陳列棚を物色しているところを、警察に通報され、王様は逮捕され、右手に持っていたエクレアのカスタードが飛び散りました。
 王様はその後、いろんな形の建物の、いろんな色の鉄格子に閉じこめられたりしましたが、王様は人間として終わっていたので、いつも何だか気分が良かったのでした。だから王様は幸せでした。時々知らない人が王様を殴ったりしましたが、王様は何もかもすべて、面白くて、笑いました。笑って笑って、大笑いでした。うんこ洩らしたりしましたが、気持ちがいいのでそのままでした。

おしまい。

文学極道

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