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作品 - 20070623_306_2148p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


雪の交信

  田崎

真昼のひかりのねつによって
融解熱をあたえられたぶぶんは
しとやかにほろほろ溶けていたので
わたしのからだが転がるにつれて
悦ばしいくらい暖かいわたしのコートは
雪を起毛にとらえていき
わたしがまわりながらとおったあとは
フラクタルの曲線をもつくものように
説明のつかないうつくしさで
これからこの一帯はかげりゆくけれど
うつわとなってひかりのけつらくをためる
この窪みのかたちがうっすらと
じっとこらしているとわずかにわかるていどの
やみばかりのなかでこそひかえめな陰影を
それとわかるひとがいなくとも
かたちづくっておいてほしいとおもう
いまはまだ猶予がある
やけにくすんだこの雪原だけれど
ちからをぬくようにねころんでいると
みみのうちがわはるかかなた
そらがあたらしくつくられている作業場のおとが
きこえるようなきがして
雪の下かおもたい雲のなかにいる
はかない交信設備と通信士を夢想する

文学極道

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