「あいしてるよ、
あいしてるよ、
(読みかけの
本、数ページ
滲んだなみだ
ぐらいに。)
ほら。」
世界は、残酷だね。
もし、私が凍結された、子ども(お父さんの)だったら、
私の言葉 全て医療行為のおかげ/なのですか? (医
療行為は無意味の中に意味を発見することだった。/の
ですね。)いつも私には無関心そうなあなた、大きな背
中、何か刻ませて、ください。(それは、医療行為では
ありませんよ。/ネ)
お父さんと同じ
洋服
来た男に、
「あなたはお仕事する格好じゃあない。」
と
言わなければなりません/でした。
(私は、
それが間違いだって
知っていた/のに。)
お父さん、
お父さん、
今日も
ご苦労さま
今
ビール持ってくるからね
お父さん。
あなたは
いっつも寂しがりや
で、
弟を腕の中で
ぎゅっ
ぎゅっ と
することで
満たされていましたね
(ふたり、そっくりだ。)
真っ暗な夜なんて、私は知らなかったけれど、あなたは
きっと知っている。/にちがいない。世界の全てを敵に
まわしたかのようなまなざしあなたに向けて/あなたは、
もう、そこにはいなかった。私は遠い冬の日、生まれた
日、あの日からずっと本州最北端のまちで凍結されたま
まなのです。/か?
あの病院には
今も
転がっている
私の無意味
これからの人生
を
医療ミス
として
歩んでゆく
/のは
嫌なんだ!/です
だから、
意味を欲した/のかも
(医療行為は病院で受けるものです/か?)
私は私を
偽ることで
(凍結されたまま、
なんですよ。 と)
あなたの息子で
ありえるのです
/でした。
だから、
理不尽に殴られたって
凍結してしまったんです。/よ
お父さん、私はきっと偽り続けなければならない。あ
なたの前で。私、(私は遥か昔、もうとっくに、あな
たの望まない形で、医療行為を受けていたんだ。/で
す。あなたは、きらい?)
それでも
あいしています
お父さん
だから、
あなたの背中
いつか
刻ませてください
ありがとう
ありがとう
「ぼくは
医療ミスなんかじゃ
ない!/よ」
世界はやっぱり
残酷だ/ネ
選出作品
作品 - 20070512_301_2061p
- [優] ホスピタル - 葛西佑也 (2007-05)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
ホスピタル
葛西佑也