選出作品

作品 - 20070512_301_2061p

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ホスピタル

  葛西佑也

「あいしてるよ、
 あいしてるよ、
 (読みかけの
 本、数ページ
 滲んだなみだ
 ぐらいに。)
 ほら。」

世界は、残酷だね。

もし、私が凍結された、子ども(お父さんの)だったら、
私の言葉 全て医療行為のおかげ/なのですか? (医
療行為は無意味の中に意味を発見することだった。/の
ですね。)いつも私には無関心そうなあなた、大きな背
中、何か刻ませて、ください。(それは、医療行為では
ありませんよ。/ネ)

お父さんと同じ
洋服
来た男に、
「あなたはお仕事する格好じゃあない。」

言わなければなりません/でした。
(私は、
 それが間違いだって
 知っていた/のに。)
お父さん、
お父さん、
今日も
ご苦労さま

ビール持ってくるからね
お父さん。

あなたは
いっつも寂しがりや
で、
弟を腕の中で
ぎゅっ
ぎゅっ と
することで
満たされていましたね
(ふたり、そっくりだ。)

真っ暗な夜なんて、私は知らなかったけれど、あなたは
きっと知っている。/にちがいない。世界の全てを敵に
まわしたかのようなまなざしあなたに向けて/あなたは、
もう、そこにはいなかった。私は遠い冬の日、生まれた
日、あの日からずっと本州最北端のまちで凍結されたま
まなのです。/か?

あの病院には
今も
転がっている
私の無意味
これからの人生

医療ミス
として
歩んでゆく
/のは
嫌なんだ!/です
だから、
意味を欲した/のかも

(医療行為は病院で受けるものです/か?)

私は私を
偽ることで
(凍結されたまま、
 なんですよ。 と)
あなたの息子で
ありえるのです
/でした。
だから、
理不尽に殴られたって
凍結してしまったんです。/よ

お父さん、私はきっと偽り続けなければならない。あ
なたの前で。私、(私は遥か昔、もうとっくに、あな
たの望まない形で、医療行為を受けていたんだ。/で
す。あなたは、きらい?)

それでも
あいしています
お父さん
だから、
あなたの背中
いつか
刻ませてください
ありがとう
ありがとう
「ぼくは
 医療ミスなんかじゃ
 ない!/よ」

世界はやっぱり
残酷だ/ネ