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作品 - 20070329_238_1955p

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「 蠢く土。 」

  PULL.




ひとりの頃は辛かった。
仕事を終えた夜は、
いつも罪の意識にさいなまれ、
眠れず、
飲めぬ大酒を喰らい、
やっと落ちた夢の中でも、
責められた。

ある日、
数が増えた。
全部で十四人いた。
わたしは、
いつものように穴を掘り、
いつもよりも大きく深く穴を掘り、
いつものようにそこに彼らを落とした。
上から土を掛け、
わたしは鼻歌を歌い、
いつもより多い仕事を終えた。
土はしばらく蠢いていたが、
やがて止まった。
その夜は酒も飲まず、
ただ眠った。
眠れた。

しばらくして、
また数が増えた。
もう数は数えなかった。
わたしは、
覚えたばかりの重機を使い、
穴を掘った。
大きく深く穴を掘った。
そこに彼らをひとりずつ突き落とし、
上から石灰を撒いた。
石灰に灼かれた彼らは、
激しく悶え踊り狂うので、
わたしは鼻歌を歌い、
上からさらに、
石灰を撒く。
やがて土を掛けると、
彼らは悦ぶ。
悦びのあまり涙を流し、
目を石灰に灼かれ、
彼らは踊り狂い、
よろこび、
悦ぶ。
埋めた後の土からは湯気が昇り、
蠢いている。
わたしは、
それを最期まで見届けて、
わたしの家に帰る。
玄関では娘がわたしを出迎え、
上がったばかりの小学校でのことを、
あれやこれやと話す。
学校には彼らはひとりもいない。
娘はそれを気にもしない。
やがて夕食が出来たと、
妻がわたしと娘を呼びに来る。
また給料が上がる。
そう伝えると、
妻は喜んだ。
妻のお腹は大きく膨らんでいて、
その中には、
娘の妹がいる。
「ねえ今日、
 また動いたの。」
そう言って、
妻はお腹をさする。
彼女たちは知らない。
わたしの仕事を知らない。






           了。

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