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作品 - 20070309_793_1914p

  • [優]  川島 - 一条  (2007-03)

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川島

  一条

川島みたいなやつは、鬼のような形相で会議室を後にした。前の日も次の日も、予言する男は現れなかった。宛名書きの仕事は、これでおしまいだ。なあ川島、と川島は肩を叩かれ、おまえは、カワシモじゃないもんな、と再び肩を叩かれた。新しい彼女が出来ちゃったもんで、今度一緒にボーリング場に行かないか、と誘われた川島は、ボーリング場に行ってもいいですけど、ボーリングというのはやらないですよ、と言った。携帯電話がリン・リンと鳴った。その携帯、おまえにやるよ、と言われたら、川島はどうやって答えればいいのかわからなかった。こんな場所にボーリング場があるわけがないという場所でシシャモは、車から降りた。新車ですが、助手席に座っている女は正面から見たらパンツが丸見えで、ここで、ブレーキ。そこは、ボーリング場。川島に聞かなければいけないことは他にもいくつかあって、携帯電話がリン・リンとなった。川島は、もしもしと繰り返しているカワシモに声をかけようかどうか悩んでいる。ここで、ブレーキした新車は、ボーリング場を後にした。ボーリングなんてやってられるか、いえねえボーリングはやらないですよ、と釘をさされたことについて、電話の相手にくどくどと愚痴ってるようだ。電話の相手は、おれじゃないよな、とシシャモが、川島の肩を叩いた。肩を叩かれたいわけではない川島は、肩を叩かれた場合にどんな顔をすればカワシモ君に気持ちが伝わるか考えていた。シシャモも同じ悩みを抱えていたが、肩を叩かれるのは、真昼間だ。ブレーキしている新車は、病院に直行して、腱鞘炎に悩んでいる女を一人拾って、カーブの向こうに衝突した。あの時、川島が助手席に居合わせたなんて、会社の誰もが知らないはずだ。ボーリング場近くのレストランで予定されていたカワシモの送別会は、腱鞘炎が悪化し延期となった。その知らせを聞いたカワシモは、ボーリング場近くの倉庫で発見されたが、シシャモさんのパンツが丸見えの件について、社内では意見がふたつに分かれた。もうシシャモの居場所は、なくなったようなもんだ。川島は、宛名書きの仕事を再開し、今度、ボーリング場に行ったら、それでもボーリングはしないことにしたが、ふたつに分かれた社内を、びゅんと新車が横切った。川島の声で、びゅんと横切った。カワシモさんの声、と女子社員がかしこまって言った。シシャモは、それはおれじゃないおれじゃないと、首を横に振り、パーティションで区切られてしまった川島の肩を、カワシモが叩いた。これはただの肩叩きじゃないのだからな、とシシャモの声で、川島は涙をこらえている。予定されていた会議は全てキャンセルされ、ねえこのあとどうするの、と聞かれたカワシモは、川島を指差した。近頃の世の中は、どこもかしこも木っ端微塵だな、という顔をすれば、ぼくたちは助かるのかもしれない、と川島はどうやら本気で思った。

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