ただ
ただひろいだけの夜空を充血する程に
まなこを凝らしたら
はしっこの辺りに裂け目がうまれ
乳白色の貴方を呼んだのは紛れもなく私です
その仄かに薫る鎖骨は
芳しき母のようであり
ミルクのようでもあり
月長石を撫でてしまいたくなる欲望
貴方が血走って見えるのは私の気のせいでしょうか
勘違いでしょうか
潮騒が後退りをためらう海岸線で
まばゆく照らされた乳白色は心なしか青白く見え静かな寝息をたてています
私も添い寝したいのですが
なにせ寒さが身にしみるほど空気はうすく
不規則な口笛ばかりが貴方の眠りを妨げてしまいそうで
怖いのです
夕焼けが帰るべき後始末をそそくさと始めた頃に
乳白色だった貴方が大海原で漂ってるのが見えます
恐る恐る近づいてみました
どス黒いまだら模様から腐臭がして
悲鳴に近い口笛ばかり漏れてしまいます
そんなに哀願しないでください
私はいたたまれず針を刺しました
ガスが抜け深海へとゆらゆら沈んでいくさまは
あわれであり
ぶざまであり
この上ないせつなさ
おもわず手を伸ばした先に巻きついた情痴
あれよあれよと言うまに暗い其処へ
にやりと笑われたような気配に助かりたいと水面を見上げれば
バブルリングが昇っていきます
震える水泡は魚についばまれ
そのさまに
我を忘れて泣きました
みずの中で泣きました
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