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作品 - 20070202_927_1819p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


まなみのハーフコート

  ミドリ



ハーフコートのポケットに
両腕を突っ込んで
まなみは神社の中を
ぐるっと一回り 散歩する

鳥居をくぐって石段の
すぐ奥がお稲荷さんだ
1月の風は穏やかで
住宅地の匂いを ここにも運んでくる

この近所にある
老舗の和菓子屋の三代目が
まなみだった

「モカをもう一杯下さい」

よくランチを食べに来る
まなみの店の
常連の青年

彼女はにっこり笑って
灰皿を取り替える
小さな粉雪が
街に降りだした

テーブルの一番隅っこに
座っていた その青年が
読んでいた新聞を斜にして
窓の外に 雪をみる

「いつもこの席ですね」

まなみが声を掛けると
タバコに火を点けた青年が
まなみを見つめて言った

「ここが好きだから」

えっ?て
尋ね返すまなみに
青年はタバコの火をボウっと
大きく膨らまして 
また言った

「この場所が 好きだから」

文学極道

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