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作品 - 20070201_899_1812p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


反ブルー

  稲村つぐ


砂まみれの指は
ずっと、月夜の中心へ巻き込まれたまま
未完のミサを奏でるために

手向けてきた花が
揺れている
細かくも入り組んだ、それは
出航するための固い岸辺

沖では生まれたばかりの波間が
繰り返し、繰り返し
どれも異なる言葉で挨拶を済ませて
いまとなっては合図とも知れず、報告とも届かず
頭上を浮かぶ無数の鳥の
鳴いたのは一羽だけ、たったあの一度

太陽も、息を吸え

積乱雲を連れた体温
マイナス
呼吸
胸骨を展開させて
割る
太刀魚の列
イコール
月齢の記憶
パーセントで
分厚い青の層は
達するより先に、すっと開き
体を飲み込んでは静かに閉じていく

無音の、圧縮が行き渡る
その下降する指先を、始終を
いま死んだばかりの貝が底から見上げている
渦巻き模様の拡散で
黒ずんでくる像を取り込むように
そしてまた新たに放ちながら

文学極道

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