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作品 - 20070131_869_1807p

  • [優]  平原 - 田崎  (2007-01)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


平原

  田崎

ぼくのくちびるがきれる、くさのひとつびとつがそれぞれのふるえ
をもち、同時に波状の真円をくるったようにかさねていく湖のみず
うみのようなそれは


平原ではない
ゆうがたになりあさになりよるになり、よるになりあさになりつい
に真昼になり、だれもがふみしめてさりゆくしめった触覚も、みず
がくさのひとつびとつに付着することで遍在をおびただしいものに
して表面張力をうしない、重力にとめどなくひきのばされるままに
じめんをたぷりしめらせていく遠いなき声もそれは


平原ではない
くさというせいめいはおおくのこえを透過して同時に沈溺させてい
く、みどりとあおと透明のまじるたいらなスクリーンの映像を、そ
のはだに無数に移植させながらそのかずは虚数にまでいたって、と
きにたいようを歓待しかぜになぎはらわれあめに受精するをくりか
えし、ほのかなくさのかおりを旅人よりとおくまでひびきとどけな
がらぼうばくと存在するその場所は


平原ではない
からまりあういろとりどりの羽は垂直にむきをかえておどりながら、
おおきな展望台へかぜがこうしんしていくきょだいなおとを、実体
をもつかどうかというちがいで、あるいはそのあいだにあまりにお
おきな断絶があるという理由で、あるいは相互に蜜をあたえあうと
いう関係性のゆえに、あるいはその中心によこたわる時間のふかい
へだたりのために、そのために、ただしずかにみつめていることし
かできなかったそこは


平原ではない
手がみみずばれしていた、そうやっていつのまにかからだはきりひ
らかれほどかれる、そうやっていつのまにかからだはきりひらかれ
ほどかれてしまった、ひろくひろくひろくひろくひろくひろくひろ
くひろく、誕生月まで希釈されていく、ぼくのまぼろしとぼうだい
なくさのスクリーンとがよるに、それぞれのいろを濡らし滲ませ、
ひとつびとつがそれぞれの語りをよぞらにはなしとどけようとする
その中層の、その中層にたたずみながら、くさを纏い身をたおして
いくゆらぎに似たその土地は、


平原ではない
いつまでも

文学極道

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