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作品 - 20070116_575_1775p

  • [優]  朗読 - 巴里子  (2007-01)

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朗読

  巴里子

電話が鳴っているアパートの一番はじっこの、先月、そこで首吊り自殺が行われた部屋で、詩人の朗読会が開催された。電話が鳴っているが、誰も出ない(電話が鳴っているという描写が正確かどうかは知らない。)、「暗殺的な気分」が晴れ、部屋の中央で傾いたテーブルの上に置かれた電話が、さっきから鳴っている。おまえは、テーブルを囲んだおれらに、ただ反射的にいくつかの詩を朗読している。そもそも詩人の朗読会というものが、この世に存在してはならないのだ。先月、首吊り自殺が行われた部屋では、先月の首吊りの件について、密やかに話し合われている。電話の主は警察かもしれないが、これは、ただのいたずら電話なのだ。「少年は、巨大なカーブの手前で道路に飛び出した。あたしは、運転席を占拠し、スピードを加速した。脳の中は、からっぽになっていく。通りすがりのパトカーが正確にサイレンを鳴らし、近付いてくる。警官は発砲するに違いない。人生は、あたしの人生はひどく平坦だった。」誰も出ない。「自販機の前で、少しだけ紳士風の老人が粘着テープを体に巻きつけ、もうすぐに消えてなくなる思い出を、語りかける相手を探している。」は、かき消された、「助手席から飛び降りたのは、火曜日にセックスした男だった。男は、水曜日には、もうどこにもいなくなる。全ての情報が開示されるとしたら、こんな夜。だけど、あたしの訃報は誰にも届かない。あたしは、その時、少年を轢き殺してしまった、誰もいない街の巨大なカーブの」おれは、ひどく暗殺的な気分に襲われ、首を吊る準備をした。おれの声は、「野球には、投手も打者も必要がない。たった一球のボールを、投げる。それを投手が、打者は、まったく打たない。のにボールが右中間を、右中間を、てんてんとかけぬける。」にかき消された。女の声は、いつもより精力的で「野手が、いない、のに右中間を。てんて、んとボール、を追いかける、かけぬける、ボールを、追いかける、野手はいない。のに野球には、投手も打者も、必要がない。ボールを追いかける、かけぬける右中間。外野、と内野、の境界へ、右中間の外から、内へ、野手は、いつも外野であり、いつも内野であり、追いかけるボールをかけぬける、野手の、野球。」女は、喉が渇いたのか、「のに、投げる、とか打つとか、である。外野と内野を隔てる、野球の、投手が投げるボール、打つ必要がない。」が鳴っている。パトカーのサイレンの音をかき消した。電話の「ボールは、右中間、への、外野と内野の境界を超え、て、んてんと、かけぬける必要が、ない。打者は、投げる。のに野球は、野球である、必要がない。投手のかけぬける、打者の追いかける、ボールを、野球は、必要が、かけぬける、右中間を、追いかける野手が、てん、てんと、一球がない。のに野球、である必要が、」女の朗読の途中で、おれは、席を立った。明日は水曜日だ、というおれの声は、女の朗読にかき消された。なぜなら、女の朗読は、その後も決して終わらなかった。電話が、鳴っている。おれは、ボールを、追いかけながら、この朗読会が終わるのを待っている。なにもかも、平坦だった。この部屋のテーブルだけが傾いて、おれの首に巻かれたロープがきつく、絞まっていく(という描写が正確かどうかは

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