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作品 - 20070108_223_1744p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


仔猫のアリーと二切れのビスケット

  ミドリ


目を閉じてママ
ピアノの鍵盤の上に ほら猫がいるから

わたしはビスケットを持って仔猫を捉まえに行く

「目を閉じていればいいのね」
ママはそういって
読みかけの本を パタンっと閉じた
光の射し込むリビングの縁側

「アリー アリー」って 静かにわたしはそういって
つま先立ち 仔猫に近づいていった
あと一メートルってとこで

アリーは不意にジャラン!っと
ピアノの鍵盤を 指で弾き鳴らしたかと思うと
器用な指先で
バッハを弾きはじめた

それからジャズだ
THESE FOOLISH THINGSだとか
BODY AND SOULだとか そんな曲たちだ

それから仔猫のアリーは すべての曲を弾き終えると
満足そうにこちらをチラリと見て
それからわたしの右手に握られた
二切れのビスケットを見て 微笑んだ

わたしは思わずその二切れを自分の口の中に
思い切り放り込んだ

ママは可笑しそうに 笑ってる

仔猫は右手をポケットに突っ込んだまま
左手でグッと肩を抱き寄せて
わたしの唇にそっと小さな
そして大胆なキスをした

文学極道

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