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作品 - 20061225_049_1722p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


へブン

  苺森


赤錆にこんがり焼かれた玄関扉のポストでむせかえる夕刊
押し寄せる感傷が、パキパキと付け爪や錠剤シートを踏みつけながら廊下を徘徊する
新聞を取り出し口からごそっと抜き、そこから僅かに突いた引き締まる外気に窒息する俺
煙草を吸おうとライターを手にするも、空気はすぐにも引火しそうなアルコール濃度
うなだれる陽に染まるカーテンを伸びをしながら捲りあげる
その向こうに見るガレッジには拉げた影を落とす自転車
ひからびた空ろなオレンジを仰いでいる自転車は俺と同じ顔だ
力任せに扉のチェーンを引きちぎれど走れやしない、やはり俺にはまだ足りない
そいつで継ぎ足すには、明日をまるごとくるむには足りないのだ

テレビ画面に写し出された白昼、こびりついた景色から剥がれ落ちる輪郭、どこにもいけない熱、フラッシュバック、なまぬるい酔い、
でたらめだらけで でたらめだらけで――床に転がった酒瓶やビデオ、食べ残しのジャンクフード、体液の染んだティッシュ、手足やネジも
酷使したためビデオからべろりと飛び出たテープは、俺のだらしないハラワタそっくりだ
夕暮れは中がひどく渇いて痒い、蠢く毛穴、肌をぱっくり開けば這い出てきたのはシリカゲル

やがて記憶の処理を始める、部屋中の一切のプラグを引っこ抜き、黄ばんだ過去を束ねるための紐をつくる
そうして幾つもの夜明けが過ぎていった、無限に続くテープ上をいつまでもループして 夜毎、
明け暮れた―どうにかなりそうで 死にたくなるほど―、流転、
使えない本能、またひとつ積んで 酸っぱいコーヒー啜ったなら、朝は晴天

ああ あいつを見つけた、疲れた冬空の下、顔色の悪い廃品回収車
待っていた、まるごと持っていってくれ!

何もが似ていて、いつもどこか似ていて可笑しい
会社へ行く時間だとお前を急かしにくる朝までが
しみったれた古新聞を漁り始める

おお ろくでなし天国

文学極道

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